トランプ米大統領が新型コロナウイルス感染症の治療薬として期待感を示す抗マラリア薬ヒドロキシクロロキンについて、投与を受けた米退役軍人の治療結果を分析した査読前の論文がネット上で公開された。これによると、効果は全くなく、死亡リスクを高める恐れさえあるとの結果が示された。

研究は、退役軍人保健局(VA)の医療センターに新型コロナ感染症で入院し、4月11日までに死亡あるいは退院した退役軍人368人の医療記録を調べたもので、臨床試験の結果ではない。専門家による査読を経て医学ジャーナルに掲載される前の状態で公開された。新型コロナ感染拡大を受けて査読前でも研究結果を共有する動きが広がっている。

論文によると、標準的な治療に加えてヒドロキシクロロキンを投与された患者97人の死亡率が28%だったのに対し、投与を受けなかった患者158人の死亡率はこれよりも低い11%だった。ヒドロキシクロロキンと抗生物質アジスロマイシンを併せて投与された患者113人の死亡率は22%。

研究者らは、患者それぞれの症状を踏まえた上で、ヒドロキシクロロキンを投与した場合、投与しない場合と比べて死亡するリスクが2倍以上に高まったと算出した。

また、ヒドロキシクロロキンの投与を受けた患者の13%が人工呼吸器が必要になったのに対し、投与を受けなかった患者の同割合は14%と、ほとんど変わらないこともわかった。

ロサンゼルスのシダーズ・サイナイ医療センターで肺疾患を専門とするジェレミー・ファルク医師は「過去1─2週間で出された複数の論文はヒドロキシクロロキンの有効性に疑問を呈している」と指摘。「当初はどの患者にも同薬を使っていたが、今は使用をやや控えるようになった」と述べた。同医師は退役軍人保健局での研究に関与していない。

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/04/post-93211.php
Newsweek 記事元 ロイター 2020年4月22日(水)13時38分

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