韓国ドラマの人気が再燃している。

 けん引するのは米動画配信大手ネットフリックスの「愛の不時着」と「梨泰院(イテウォン)クラス」。ファンは女性が中心で年代は幅広く、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための巣ごもり生活を機に視聴した人も目立つ。

映画やK―POPも勢いがあり「第4次韓流ブーム」の到来とも言われる。

 何が女性たちの心をとらえているのだろう。

 ▽「ケア男子」まさに理想/信念貫く姿に勇気

 編集局には無料通信アプリLINEで「私もハマっている」との声が多く寄せられた。「韓国ドラマはテンポの良さと脚本のうまさ、高い演技力で見始めたら止まらない」。呉市のパート女性(53)は5月だけで四つのドラマシリーズを「見てしまった」という。

 特に気に入ったのが「愛の不時着」。韓国の財閥令嬢のヒロインがパラグライダーの事故で北朝鮮に不時着し、現地のエリート将校と恋に落ちる奇想天外な設定だ。各話約70分で全16話と長いが、2人が南北分断という障壁に立ち向かう姿は「現代版ロミオとジュリエット」のようで夢中になった。「長い自粛生活も全く苦になりませんでした」と振り返る。

 広島市西区の会社員女性(37)は「自立した強いヒロインと、彼女を支える実直な男性という構図が今っぽい」と話す。実業家でもあるヒロインは、兄2人より優れた経営手腕を持ち野心がある。愛人の子、女性であるために後継者として認められず、敵も多い。苦悩しながら立ち向かう姿に、竹原市の50代保育士女性は「病気や記憶喪失がお決まりで、弱々しい女性が多かった以前の韓国ドラマとは対照的」とみる。

 廿日市市の公務員女性(40)は、「俺についてこい」じゃなく、料理もできて女性をそっと後押しする「ケア男子」の存在に注目。男女の立場も対等で、「働く現代女性の理想が詰まっていて、胸キュンした」と力を込める。北朝鮮の生活が垣間見える点も印象的だ。脇役のコミカルな演技も視聴者を飽きさせない。

 一方、「梨泰院クラス」はウェブ漫画が原作。大企業の経営者親子に人生を狂わされた青年が、仲間とともに社会の底辺からのし上がる。安佐南区の高校生女子(17)は「復讐(ふくしゅう)劇だけど青春ドラマの要素もあって、私たちも感情移入しやすい」と寄せた。

 前向きに壁を突破していくストーリーで、男性のファンも獲得している。東区の会社員男性(52)は「逆境に負けず信念を貫く主人公に勇気をもらえる。どんでん返しの連続で痛快」。三次市の男性(73)は「格差社会への反発といった現代韓国社会の空気も反映されている」とみる。米アカデミー賞4冠の映画「パラサイト 半地下の家族」と「共通点を感じた」。

 ドラマやK―POPなど韓国エンターテインメントの質の高さを生みだすのは、国を挙げての支援だ。韓国文化院(東京)の黄星雲(ファンソンウン)院長(52)によると、韓国政府は1990年代からエンタメ産業に力を入れ始め、本年度のコンテンツ分野への政府予算は約890億円に上るという。「資源に乏しい韓国にとって、エンタメは重要な輸出産業。ドラマや音楽を入り口に、『韓国に行きたい』『ロケ地を巡りたい』と思う人が増えれば、コロナ禍後の観光にもつながる」と期待する。

https://news.yahoo.co.jp/articles/66a29d735711dc61495cf00b6926f059af32378d