■ 世界にリスクをばらまく中国の一帯一路

 近年、中国は、「一帯一路」の柱として、東南アジアやアフリカなどで、ビル、鉄道、橋梁、道路、ダムなどの建設工事を多数請け負っているが、それらの建設工事においても、早期の倒壊事故、手抜き工事の多発、環境破壊、汚職・腐敗など様々な問題が生じている。

 2017年7月、ケニア西部で総工費1200万ドル(約14億円)をかけて中国企業が建設していたシギリ橋が、完成を目前にして崩落した。これまで政府の開発プロジェクトから置き去りにされてきた地域であり、2014年には川を渡ろうとしたボートが転覆して十数人が死亡する事故も起きていた。ケニアのインフラ開発プロジェクトは、中国企業と中国からの出資に大きく依存している。

 2020年1月、カンボジア南部のケップ州で、中国企業が建設中の7階建てのビルが倒壊し、36人が死亡、23人が負傷した。カンボジアでは2019年6月にも、シアヌークビルで建設中のビルが倒壊し、28人が死亡する事故が起きたばかりだった。原因は低品質の建築資材を使ったことなどが関係しているとみられている。

 ラオスでは、中国の援助を受けて、2020年までに75カ所、総発電量は1万MW規模の発電所建設が進んでいる。しかし、急激な開発によって、メコン川一帯で環境破壊が引き起こされ、塩害や水質汚濁で農業や漁業に大きな被害が出ている。ラオスは、世界有数の最貧国であり、中国から高速鉄道や水力発電ダムの建設資金として、数十億ドル規模の多額の資金援助を受けているが、2020年には中国へのローン返済で2億5000万ドルを支払わなければならず、デフォルトの危機が迫っていると指摘されている。

 「一帯一路」の目玉の1つである「中国パキスタン経済回廊」(CPEC)計画では、620億ドル(約6兆6400億円)規模で、港湾や道路の整備、パイプライン、生産施設、パキスタン国内最大規模の空港などを建設する予定だが、2020年6月、建設を請け負った華能山東如意電力会社(HSR)などが建設費用を水増しして、過大請求していた問題が発覚した。この問題は、パキスタン政府を巻き込んだ大汚職事件となるおそれがある。

 中国は、改革開放以降、急激な経済発展を遂げ、その資金力と安い労働力を武器として全世界に経済進出を試みてきた。その背景となったのが中国の巨大経済圏構想である「一帯一路」である。本稿で取り上げた土木建設事業は、「一帯一路」の核心事業だが、その腐敗体質、安全性軽視の姿勢、未熟な建設技術、低い遵法精神などにより、今後、全世界的に倒壊事故や環境破壊などを引き起こす可能性が高い。



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https://news.yahoo.co.jp/articles/81cc6af8cb9deb181e4c9d6588ee399f7d609c5e?page=1