裁判に対する韓国政府の対応に日本政府はイラ立っている

 8月15日、韓国の世論調査会社ギャラップが発表した政権支持率は、就任以来最低の39%を記録。文在寅政権の失策で、物価上昇が続く一方、産業の空洞化が進み、失業者が増加している。また不動産価格の高騰で、市民のマンション購入が難しくなったのだ。保守系団体が申告した文在寅大統領の退陣を求める集会の参加者は12万人に達したが、2日前の8月13日にソウル市が集会を禁止する行政命令を出した。使ったカードは新型コロナウイルス感染予防だった。

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 8月15日、日本の終戦記念日を、韓国は光復節と呼んでいる。日本の統治から独立解放された日という意味だ。

 韓国では年間を通じてさまざまなデモや集会が行われるが、昨年の日本製品不買運動がはじまる前まで、韓国で大規模な反日行動を目にすることは少なかった。

 反日集会は毎週水曜日に日本大使館敷地前で行われている水曜集会と、3月1日の抗日独立運動記念日、8月15日の光復節前後に行われる程度だった。

 文在寅大統領は就任以来、光復節の演説で北朝鮮に触れてきた。就任直後の2017年に北朝鮮との対話と協調を訴えた後、18年と19年にも南北交流を勧めたい考えを強調した。4年目となる今年は北朝鮮にはほとんど触れず、憲法10条と日本との対話に重きをおいた。

 韓国憲法10条は「すべての国民は人間としての尊厳と価値を有し、幸福を追求する権利を有する」と規定する。

 日韓関係の悪化は、2018年10月に韓国最高裁が日本企業に徴用工への賠償金の支払いを命じる判決を下してはじまった。

 日本政府が19年7月に輸出管理を強化すると、日本製鉄に対する訴訟を起こした4人のうち、唯一人存命している李春植(イ・チュンシク)さんが「私のせいで韓国が損害を被っているのではないか」と話したという。文大統領は、個人の尊厳を守ることが国に損害を与えることはないと憲法10条を引き合いに出して、李さんに責任がないことを強調した。

 日本が腹を立てているのは、訴訟を提起している旧朝鮮半島出身労働者ではない。裁判を起こすのは個人の自由だからだ。裁判に対する韓国政府の対応が問題なのだ。

日本からの5億ドルを遺族に支払わなかったのは横領にあたると主張され

 盧武鉉政権以降、統治時代の労働に関する訴訟が増えたが、朴槿恵政権時代は、判決の留保が相次いだ。

 韓国政府は、朴槿恵前大統領の実父である朴正煕政権が締結した日韓請求権協定を国民に周知させてこなかった。

 日本企業に支払いを命じる判決を下しても、日本企業が支払いに応じることはない。一方、協定を根拠に訴えを棄却すると、協定の内容が国民に明らかになり、訴訟好きの韓国人は韓国政府に対する訴訟を次々と起こすだろう。

 朴前政権下の裁判所は先送りを選択した。

 実際に昨年8月14日、統治時代の徴兵被害者遺族83人が、1965年の日韓基本条約に基づいて日本から受け取った補償金を遺族に支給しないのは違憲だと憲法裁判所に申し立てた。

 韓国政府は日韓基本条約締結後、徴兵の死者・行方不明者に2000万ウォン、負傷者には2000万ウォン以下の慰労金を支給した。が、条約締結時に韓国政府が日本に要求した個人補償を国民に支給することはなかった。

 遺族たちは、韓国政府が日本から無償有償5億ドルを受け取りながら、国民に補償金を払うことなく、経済協力資金として使ったのは横領にあたると主張した。

 文在寅大統領は光復節の演説で日本についても言及した。日本と共に努力していくと述べ、韓国政府はいつでも日本政府と向き合う準備ができているなど、韓国の要求に応じない日本に責任があるかのような発言をした。しかし、そもそも関係悪化を招いたのは文政権だ。

(続く)

佐々木和義 週刊新潮WEB取材班編集

2020年8月17日 掲載 新潮社 8/17(月) 17:01
https://news.yahoo.co.jp/articles/30f4bbbcc485c4a9fb6a9fe43da47a8c58e49d18

「K防疫」は支持率が低下する文大統領の最後の砦かもしれない
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警察は反政府勢力にバリケードを築いた
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バリケードは結局突破された
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