韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が、北朝鮮からの脱北者たちを支援する団体への監視や規制を強めている。文政権のこの対応に、米国の歴代政権で対朝鮮半島政策に関与してきた元政府高官や、朝鮮問題に詳しい学者、人権活動家らが強く抗議する書簡を送った。

 また文政権は最近、韓国への亡命を希望した北朝鮮国民2人を本国へ強制送還した。この措置についても、米国で「前例のない残酷な措置」と非難する声があがっている。このままだと文大統領は、米国での年来の韓国支援者たちからも見捨てられそうな気配となってきた。

文政権の「前例のない残酷な措置」
 米国の人権団体「北朝鮮人権連合」は会長のスザンヌ・ショルテ氏の名で韓国の文在寅大統領あてに抗議の書簡を8月12日付で送ったことを発表した。朝鮮半島の安全保障問題を研究する米国民間研究団体「防衛フォーラム財団」も連名の形で抗議に加わっている。
この抗議状は「文在寅政権による北朝鮮人権運動の抑圧について」と題され、以下のような内容となっていた。

・私たちは、あなたの政権(文在寅政権)が、北朝鮮国民の生活を救い、教育し、保護し、改善するための活動を続ける主要な団体すべてを抑圧して、北朝鮮での人権尊重の活動を侵食する行動をとったことに深い懸念を感じている。

・私たちは、米国の民主党、共和党両方の大統領たち、つまりリチャード・ニクソン、ジェラルド・フォード、ジミー・カーター、ロナルド・レーガン、ジョージ・H・W・ブッシュ、ビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマ、ロナルド・トランプ各大統領の政権に参画した経験があり、さらに米国内の政治的な各党派をまたぐ民間の組織を代表しているが、みな一様にこの懸念を共有している。

・その懸念とは、北朝鮮の国民の人権を尊重することに対する、国際社会、とくに韓国の責任に対してである。国連の2014年の「朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の国民の人権調査」が明記したように、国際社会は北朝鮮国民を人類への罪から守る責任を有する。


・国連人権理事会は、中国やその他のすべての諸国に対して、「北朝鮮から脱出した人間を北朝鮮に強制的に送還してはならないという原則」や「政府や民間の財団などの組織が北朝鮮の人権状況の改善のために脱北者を支援することや、北朝鮮の人権状況を広く伝えること」を訴えている。

・しかし貴政権(文在寅政権)は韓国の歴代政権とは異なり、最近、北朝鮮国民2人を韓国内から本国の危険な状況へと強制的に送還した。前例のない残酷な措置だといえる。さらに貴政権は、韓国内で北朝鮮の人権状況を改善しようと活動する市民社会団体への公的支援をすべて打ち切るだけでなく、一般からの支援の停止も試み、韓国内の脱北者たちを抑圧するようになった。

・7月に韓国統一省が、北朝鮮の人権改善や韓国内での脱北者の定住支援を推進する計25の市民団体への立ち入り調査や、その他の64の類似団体への書類再提出の要求を発表したのは、恐るべきことである。それらの措置は、北朝鮮の人権状況改善のための活動を阻害することを意図しているからだ。

・私たちは朝鮮半島の人々への大いなる尊敬を抱くアメリカ国民として、貴政権がこの種の政策を再検討し、国外に出た北朝鮮国民を二度と本国へ強制送還せず、脱北者を助ける団体を脅したり妨害する政策を改め、北朝鮮国民の人権状況改善のための団体の活動への支援を増すことを切実に要望する。このままだと、米国全体の貴政権への支持を激減させかねない。

(略)

 今回、米国の「北朝鮮人権連合」が文大統領に送った抗議書簡に署名した人物の中で、先に挙げた13人は、いずれも米韓同盟の強い支持者たちであり、これまで歴代韓国政権を支援する姿勢をみせてきた。そうした米側の親韓派たちからも非難される状態となったことは、文大統領がいかに異端であるかを表しているといえよう。



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https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61749