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▲『国体論』・白井聡著、ハン・スンドン訳、メディチ メディア発行、336ページ、1万8,000ウォン

「私には安倍晋三総理が推進してきた政策を継承しなければならない使命がある。」

健康悪化で突然退場したアベの後に続いて新しく就任したスガ・ヨシヒデ日本総理の一声だ。「リトル アベ」になるという明確な宣言。右傾化の暴走を止めて日本の新たな変化を期待した人々の立場では気が抜ける言葉に違いない。

しかし、日本の若手政治学者・白井聡、京都精華大総合人文学科教授が見るにスガの発言は全く新しくない。サトシ教授は「日本はすでに破滅に入ったし、アベでない誰がきても変わらないだろう」と日本の未来を暗く見通す。

40代の若い学者が自国の未来をこれほどまで極端に追い込む理由は日本という国の構造的限界を看破するからだ。日本の人々が神のように持ち上げる「天皇制」が災難の核心だ。太平洋戦争敗戦後、天皇制を存続させた代価として日本は米国の植民地に次ぐ従属国に転落し、その時から破局は始まったというのが彼の診断だ。『国体論』はその破滅の歴史を戦前と戦後の時代を整理した本だ。「国体」とは天皇制中心の統治体制を意味する。

まず敗戦前に行ってみよう。19世紀後半、明治維新後に確立された天皇中心の近代日本統治体制はヨーロッパを凌駕する帝国主義侵略と植民政策追求に出た。大東亜帝国という妄想に近い無謀な野心で日本国民は天皇陛下の忠誠にあふれる赤字で動員され、韓国と中国をはじめとする東アジアは犠牲者になった。

「国体」に対する反対者、批判者はみんな除去された。日本の敗戦は当時「国体」が持った反民主主義と閉鎖性が表わした惨劇だった、と著者は指摘する。

もちろん敗戦後、日本の天皇は実権のない象徴的存在に倒れた。しかし消えたのではなかった。戦後日本の歴史は新たな天皇の登場を知らせる。まさに米国だ。米国は日本天皇に敗戦責任を問わず天皇の地位を認めた。その黙認の条件で日本は米国に安保や経済で無限従属することになった。天皇と米国の秘密の取り引きが成し遂げたことだ。

著者は対米従属構造の一部として設計された「象徴天皇制」という米国の長い間の計算から出たという点も指摘する。屈服の代価は甘かった。東西冷戦期、米国の属国の役割を忠実に遂行した日本の株価は沸きたった。米国の全幅的支援で日本は経済繁栄と安定した安保的地位を満喫する。しかし、冷戦が消えて日本の地政学的価値が消えるとすぐに米国の保護は「収奪」に変わった。日本の失われた30年をもたらしたプラザ合意は米国が日本を殴って強く押さえつけた代表的事例だ。

それでも日本は米国から抜け出すつもりがない。経験したことのない未来ではなく屈辱的だが豊かだった過去を捕まえたい日本右翼勢力のためだ。米日同盟体制下で繁栄した戦犯勢力と韓国戦争(朝鮮戦争)やベトナム戦争など各種「戦争特需」で経済成長の果実を味わった右派ナショナリストがその主人公。日本の右傾化と軍国主義復活を夢見たアベ政権はもちろん、アベの継承者を公言したスガ政権まで含まれる。

彼らは対米従属の経済的下部構造は崩れたが、安保従属の価値は依然として有効で、また強力だと信じている。そのため、日本右派が望むことは新冷戦の到来だ。米中葛藤が深まり、北核問題が膠着状態に陥ることは日本右派では好材料だ。北米関係が緩やかになる局面ごとにアベ政権が戦々恐々としたのは日本が願って描い描いた未来とは違ったからだと著者は批判する。天皇制を代価に得た平和主義の虚像だ。

著者は戦前の国体形成-復興-没落期と戦後国体の軌道を比較して、日本が再び没落の道を歩いていると警告する。「真珠湾攻撃当時、日本が戦場で勝利したのに本質的に破滅しつつあったような意味で今日の日本社会もまた破滅しており、戦後国体によって規定された日本社会の内在的限界を表出している。国体という観点を通じて日本の現実を眺めなければ私たちは一歩も前に進むことができない。」

戦後日本体制の本質は何か、「ポスト アベ」のスガ政権の日本はどこに行くのか見抜きたいなら役に立つ本だ。対米従属は日本が永遠の敗戦状態に留まることだと警告する著者のもう一つの著書「永続敗戦論」も一緒に読んでみたら良いようだ。

カン・ユンジュ記者

ソース:韓国日報(韓国語)日本右翼が韓半島平和ムードを敬遠する理由
https://www.hankookilbo.com/News/Read/A2020091709240003893

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