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 【シンガポール=森浩、北京=三塚聖平】オーストラリアで中国外交官による政界への工作疑惑が浮上し、現地捜査当局が実態解明に乗り出した。豪州ではこれまでも中国の工作疑惑が浮上。豪州が新型コロナウイルスの国際的な調査を求めたことで「どん底」(豪公共放送ABC)と呼ばれるほど悪化する豪中関係だが、さらなる冷え込みは避けられない状況だ。

9月以降の豪州メディアの報道によると、豪捜査当局は在シドニー中国総領事館の外交官が、東部ニューサウスウェールズ州議会上院の野党・労働党に所属しているモーセルメイン議員の政策顧問と共謀し、国内政治に干渉しようとした疑いがあるとみている。政策顧問は中国系豪州人だという。

 モーセルメイン氏は親中派議員として知られており、新型コロナ対応をめぐって、中国の習近平国家主席の指導力を称賛する発言も行っている。

 捜査当局は6月、モーセルメイン氏の関係先を家宅捜索。ABCによると、政策顧問宅から押収したパソコンや携帯電話には、中国の外交官とやり取りしたメッセージが残されていたという。また、政策顧問とつながりがあった可能性がある国営新華社通信など駐豪中国メディア記者の自宅も捜索したもようだ。

 疑惑をめぐって中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官は今月16日の記者会見で、捜査を進める豪州に対して、「中国大使館・領事館の正常な職務履行を政治化したり汚名を着せたりすることを止め、中豪関係に新たな厄介事と障害を作り出さないよう求める」と反発した。

 豪州では昨年11月にも、中国の情報機関が総選挙(昨年5月実施)に中国系豪州人の30代の男性を立候補させようとしていた疑惑が判明。男性は豪保安情報機構(ASIO)に対応を相談したが、その後にホテルで死亡しているのが見つかった。モリソン政権は相次ぐ中国による工作疑惑に警戒感を強めており、昨年12月には内政干渉を発見し、捜査するための新組織を設立する方針を発表していた。

サンケイビズ 2020.9.20 18:25
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/200920/mcb2009201825003-n1.htm