【ソウル時事】韓国軍は24日、黄海上で北朝鮮への越境を図った韓国人の船員を北朝鮮軍が射殺したと発表した。新型コロナウイルス流入の懸念からか、北朝鮮軍は海上で遺体を焼いて遺棄。韓国の文在寅大統領は「衝撃的事件だ。いかなる理由であれ容認できない」と強く非難し、北朝鮮に責任ある説明と措置を求めた。

 射殺されたのは海洋水産省の40代の男性船員。韓国側が北朝鮮との境界線と定める北方限界線(NLL)に近い小延坪島付近の海上で21日、作業中の船からいなくなった。韓国軍は22日午後、男性が北朝鮮側海域で漂流しているのを確認した。
 韓国軍によると、北朝鮮軍の船舶が22日午後、漂流中の男性に接近。しばらく様子を見ていたが、同日夜、兵士が男性を射殺し、海上に浮いた遺体に油のようなものをまき、焼いたという。兵士は防護服や防毒マスクを着用しており、上層部の指示があったとみられている。
 男性は救命胴衣を着用し、浮遊物に乗って漂流していた。軍や警察の調べでは、遺書は見つかっておらず、いなくなった時の状況から、自らの意思で越境した可能性がある。徐柱錫国家安保室第1次長は「国際規範と人道主義に反する行動」と糾弾し、北朝鮮に謝罪と責任者の処罰を求めた。
 新型コロナの世界的感染拡大を受け、医療体制が脆弱(ぜいじゃく)な北朝鮮は、国境を封鎖して徹底した防疫対策を実施。金正恩朝鮮労働党委員長は8月、中朝国境沿いに「緩衝地帯」を設け、侵入者への射殺命令を出したとされる。

時事ドットコム 2020年09月24日20時08分
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