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国連総会演説の波紋
写真:現代ビジネス

 9月24日、韓国の中小企業や新興企業が多く上場する、“コスダック指数”が前日比4.3%下落した。

 その背景の一つとして、南北境界線付近の海域で北朝鮮軍が韓国人男性を射殺した事件のインパクトは大きい。

 韓国は、北朝鮮による自国民殺害の事実を把握していたと報道されているが、特に目立った対応策をとらなかった。

 また、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は国連総会の演説で朝鮮戦争の“終戦宣言”を訴えた。

 それについて、韓国は事前に米国などへ連絡をしなかったといわれえている。

 事の真偽はともかくとして、そうした行為は米国をはじめ主要国の不信感を高めることになりかねない。

 国際社会における韓国の孤立感は徐々に高まりつつあるようだ。

 世界の主要投資家は米韓関係の不安定感が高まる展開を警戒し、韓国株を売った。

 欧米でコロナウイルスの感染が拡大し、米国の景気回復に息切れ感が出始めたことの影響も大きい。

 自国を取り巻く不確定要素が増える中、文大統領は安全保障、経済運営、国際情勢への対応などの点で明確な指針を出せていない。

 米国は文政権に明確に立場を示すよう圧力を強めている。

 その状況下、外需依存度の高い韓国経済が自力で安定を目指すことは容易ではないだろう。

◆南北宥和を重視する文大統領への不安
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 9月24日のコスダック指数の下落には、文大統領の対北朝鮮政策への懸念を強める投資家心理が影響した。

 南北の宥和を過度に優先し、国民の安心感を支えることが難しくなるという投資家の懸念が高まり、相対的に経営基盤が弱い新興企業などの株が売られた。

 米国の株価下落の影響に加えて、文政権の政策リスクを警戒する投資家が増えていることは軽視できない。

 同日、韓国国防部は海洋水産部職員の男性が22日に北朝鮮軍によって射殺され遺体が焼かれたことを発表した。

 韓国国内の報道によると、22日の時点で韓国軍は男性が北朝鮮側の海域で漂流していたことを確認していた。

 韓国軍は、その後の展開もリアルタイムで把握し、大統領府(青瓦台)に報告したという。

 しかし、文政権は対応をとらなかった。

 6月に南国の共同事務所を爆破して以降、文氏が目指す南北宥和は行き詰まった。

 その後も文政権は対話を呼びかけているが、北朝鮮は応じていない。

 つまり、北朝鮮が韓国の主導する宥和や統一に賛同するとは考えられない。

 また、北朝鮮はコロナウイルスの流入を防ぐために不法入国者に対する強硬措置を辞さない方針であるとも伝えられている。

 そう考えると、なぜ、文政権がいち早く救出に動かなかったかがわからない。

 それに加えて、文氏は国連総会での演説(事前収録)で「朝鮮戦争の終戦宣言を実現したい」と述べた。

 文氏の見解に関して、「北朝鮮が核開発をあきらめていない状況下で終戦を目指すのは考えられない」と指摘する安全保障の専門家は多い。

 南北宥和を重視するあまり、文政権は自ら国際世論から遠ざかっているように映る。

◆米国が迫る“ショウ・ザ・フラッグ”

 南北宥和への不安に加えて、世界の主要投資家は米韓関係の先行きにも注目している。

 足許、米国商務省はインテルとAMDに対して、一部半導体製品のファーウェイへの供給を認めた。

 米国が許容できる範囲で自国企業の利益を優先することは自然なことだ。

 その一方で、米国は同様の許可申請を行ったサムスン電子とSKハイニックスには供給を認めていない。

 複数の要因が考えられる中、米国政府内で文政権への不信感が高まっていることは軽視できない。

(続く)

真壁 昭夫(法政大学大学院教授)

現代ビジネス 9/28(月) 7:01
https://news.yahoo.co.jp/articles/744d29fb804abc9fa4a9e89d5559eef96c9b6b13