【新刊】ジェームス・ドーズ著、ピョン・ジンギョン訳『あしき人々』(五月の春刊)

「前線に行ったら必ず強姦(ごうかん)した。何回もやったかって? 互いに言ったりしてたよ。一種の競争意識が生まれたりした」

「姿形の見分けがつかなくなるまで人を刺すんだ。慣れてくると、こういう考えが浮かぶ。こうすれば実績が上がっていくだろうと」

 もっとむごたらしい、残酷な行為が本書には詰まっている。1937年以降、日中戦争へ日本軍の兵士として参戦し、強姦・虐殺・拷問・生体実験などを行った当事者らが、自らの残虐無道な行為を告白している。戦後にソ連のシベリアの収容所に投獄され、そこから中国の撫順収容所へ移送された戦犯たちだ。彼らは軍事裁判で死刑になるだろうと思っていたが、1957年に釈放され、日本に戻った。その後「中国帰還者連絡会」を結成し、戦争犯罪の実相を伝えながら平和運動を展開した。これは「撫順の奇跡」と呼ばれている。

 戦前の彼らは教師・医師・農民など「平凡な人々」だった。あしき人間がどのようにつくられ、どのように悪行を防ぐことができるかについて考えさせる一冊。356ページ、1万9000ウォン(約1700円)

李漢洙(イ・ハンス)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 2020/10/03 05:30
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