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外国のスパイや機密情報の流出などを捜査する、警視庁の外事部門が19年ぶりに再編されることになりました。北朝鮮や中国を担当する部署を拡充する方針で、今後、情報収集や監視を強化するものとみられます。

警視庁は、日本で活動する外国のスパイや国際テロなどを捜査する外事部門を設けていて、ロシアなどを担当する外事1課、北朝鮮や中国などアジアを担当する2課、イスラム過激派などを担当する3課が設置されています。

関係者によりますと、来年の4月から外事部門を現在の3課から4課体制に増やし、今はアジア全体を受け持っている外事2課から独立させる形で北朝鮮を専門に担当する課を新たに設置する方針を固めました。

北朝鮮工作員の活動や日本からの不正輸出、さらに、過去の日本人拉致事件などへの対応を強化するねらいがあるということです。

一方、中国が先端技術分野などでスパイ行為を活発化させているとの指摘がある中、今の外事2課を中国などの対応に特化することで、対中国についても実質的に体制が強化される見通しです。

戦後、日本の警察の外事部門は、旧ソビエトを中心にした共産圏諸国への対応に重点が置かれていましたが、北朝鮮や中国の脅威に対して、情報収集などを強める必要があると判断したものとみられます。

警視庁は今後、具体的な予算や人員などについて関係機関と調整することにしています。

再編の背景「高まる脅威」

警察の外事部門が北朝鮮や中国などへの対応を強化する背景には、日本に対するさまざまな脅威が高まっていることがあります。

北朝鮮は、核やミサイルの開発を続けているとみられ、警察当局は工作員による日本国内での活動も依然として行われているとみています。

また、過去の拉致事件の解決の糸口も見えないままで「今後、何をしてくるか最も分からない国だ」と話す捜査関係者もいます。

一方、中国もハイテク分野などでアメリカと激しい覇権争いを繰り広げていて、アメリカではFBI=連邦捜査局が、中国によるスパイ行為への取締りを強化しています。

最近は、従来のような情報機関によるスパイ活動だけではなく、経済活動などを装って情報を入手しようとする動きも確認されているということです。

これまで警視庁では、北朝鮮と中国を1つの課で担当してきましたが、別の課に分けることで専門性を高め、各国との情報戦に対抗するねらいがあるものとみられます。

また、来年にはオリンピック・パラリンピックも予定されていて、今後、日本のインフラなどをねらったサイバー攻撃への対策も強化することにしています。

作家の麻生幾さん「大きな転換点」

今回の再編について、小説「外事警察」など、多くの作品で公安警察の実態を描いてきた作家の麻生幾さんは「東西の冷戦時代は東側のスパイ活動に対抗する意味合いもあり、警察の外事部門の中でも旧ソビエトを中心に担当する部署が花形とされてきた。いま、ミサイル開発を進める北朝鮮や勢力拡大が著しい中国などへの対応を強化することは、歴史的に重要な意味を持ち、大きな転換点になるのではないか」と話しています。

そのうえで「特に中国は、今までの情報機関のメンバーだけでなく、一般の留学生や企業で働く人を使った新たなスパイ活動にも力を入れているとみられる。目に見えない世界だが、知らない間に脅威が迫っているおそれがあることを認識すべきだ。警察の外事部門の重要性は大きく増している」と指摘しています。

専門家「北朝鮮の実態分からず 日本にとって最も脅威」

北朝鮮の研究を行っている聖学院大学の宮本悟教授は「核・ミサイル開発を進める北朝鮮は、日本にとって最も脅威だと考えられる。漁船などによる活動や工作員による外貨獲得の動き、それにサイバーテロもあり、いまだに実態の分からない国だという認識を持つべきだ」と指摘しています。

そのうえで「北朝鮮が日本のどういう情報を入手しているのか、工作活動の実態をつかむ捜査に加えて、的確に分析できる人材が求められている」と話しています。

NHKニュース 2020年10月9日 18時50分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201009/k10012656721000.html