中国が、サムスン電子と系列企業の役員・社員およそ200人を乗せて13日に中国へ向かった韓国のチャーター機2機の運航を事前通知なしに取り消した。今年5月の韓中合意で導入した企業関係者ファストトラック(入国手続き簡素化)制度を一方的に無視するものだ。サムスンのチャーター機が許可された西安と天津の2カ所には、サムスン電子の大規模工場がある。とりわけ西安工場はサムスン唯一の海外メモリー半導体生産基地で、これまでの70億ドル(現在のレートで約7320億円。以下同じ)の投資に続き、80億ドル(約8370億円)が追加投入される予定だ。

 中国が、コロナの懸念によりチャーター機の運航を取り消したということもあり得る。だが韓国側に事前通知して理解を求めるのは、それほど難しいことなのか。それすらやらないのは韓国と韓国政府、韓国国民に対する最小限の尊重もないからだ。にもかかわらず、韓国外交部(省に相当)は「最近中国は海外からのコロナ確定患者の流入増加に伴い、国籍や企業関係者であるかどうかとは関係なく防疫を強化している」とコメントした。またしても中国の代弁者として乗り出したのだ。共産党中央政府とは無関係だとかばうことまでやった。先月には、中国が北朝鮮の6・25南侵を歪曲(わいきょく)する発言を売り返したにもかかわらず抗議の論評一つ出さなかった。大韓民国の政府ではない。

 今年初め、武漢発のコロナが中国で流行するや、大多数の国が中国人の入国を禁止した。「感染源の遮断」が防疫の第1原則だからだ。韓国国内でも、遮断すべきという専門家や国民の要求が降り注いだが、文在寅(ムン・ジェイン)政権は最後まで目を背けた。むしろ、大統領は習近平に電話をして「中国の困難はわれわれの困難」と言った。ところが中国は3月に外国人の入国を禁止するに当たり、韓国にほのめかしもしなかった。「外交よりも重要なのは防疫」だと、訓戒まで行った。そのときも、韓国政府は「中国の措置は世界に向けたもの」だとして擁護した。反面、日本が外国人の入国禁止を行うと「真意が疑わしい」「非科学的、非友好的」と非難した。11日から、中国へ行く韓国国民は自費およそ40万ウォン(約3万7700円)を投じてコロナ検査を2度受けなければならないが、韓国に来る中国人は無料検査を受けている。にもかかわらず、韓国政府は「おかしくはない」という。

 この政府は中国の前に立ちさえすると「ネコの前のネズミ」になる。中国の楊潔チ・共産党政治局委員は、ソウルではなく釜山で青瓦台(韓国大統領府)安保室長と会った。青瓦台の表敬訪問も行わなかった。この異常な事件について、誰も国民に説明もしなかい。2017年の大統領訪中時は国賓晩餐を行っても写真1枚配布せず、問題が提起されるや後になって一部を公開したこともあった。韓国の写真記者が中国の警護員から集団暴行される事件も起きた。中国が事前に一言もなく約束や慣例を破る暴力をほしいままに振るっても、文政権は主人に仕えるかのように顔色をうかがうばかりだ。これら全てが「習近平訪韓」のための低姿勢だという声が上がっている。習近平が韓国に来たらいかなる国運でも開けるというのか。中国と文政権は、これ以上韓国国民を軽んじてはならない。

朝鮮日報日本語版 11/14(土) 8:00
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