朴槿恵(パク・クンへ)大統領の弾劾を控えた2016年末、ソウル大学の在校生・卒業生コミュニティーサイト「スヌライフ」で、与党セヌリ党の議員の携帯番号が公開された。弾劾賛成を迫るため議員らに電話をかけろ、という意味だった。書き込んだ人物は「弾劾だけが生きる道」だとし、30時間かけて韓国国会のホームページなどを検索して作った、と記した。電話番号は急速に広まっていった。そのころスヌライフは「最悪の同窓賞」も作って禹柄宇(ウ・ビョンウ)民情首席を1位に選び、チョ・グク教授は「わが校の学生たちが選んだ」と誇りつつ引用した。数年後に自分が最悪の同窓に上るとは想像すらできなかっただろう。

 11月下旬、スヌライフに「朴槿恵大統領、ごめんなさい」という書き込みがアップされた。文在寅(ムン・ジェイン)政権と比較する13の事由を挙げ、朴・前大統領に「ごめんなさい」と言った。書き込みを行ったユーザーは「家を2軒持っているといって検察総長(当時の蔡東旭〈チェ・ドンウク〉検察総長)をくびにしたとき、悪口を言ったけれど、今回査察をしたといって検察総長(尹錫悦〈ユン・ソクヨル〉検察総長)を追い出すのを見ると、あれは悪く言うことじゃなかった。ごめんなさい」と切り出した。「原発のせいで『死にたいのか』と言うのを見ると、文体部(文化体育観光部。省に相当)の公務員を左遷したのは正常な人事」とも記した。

 「崔順実(チェ・スンシル)の娘を悪く言ったけど、チョ・グクの息子・娘の書類偽造を見ると、アジア大会金メダルは誠実な努力」とつづった。「国民は家を買うなと言いながら住宅価格は上げるのを見ると、(朴槿恵政権)当時家を買えというのは庶民のため先見の明があった」ともつづった。「謝罪してもなぜ質問は受け付けないのかと悪く言ったけど、謝罪だけでもやるのは品格が立派なことのようだ」とも書き込んだ。その上で「朴政権が最悪だと悪口を言ってごめんなさい。あのときは、こうまで一度も経験したことのない世の中が来るだろうとは思いませんでした。ごめんなさい」と書いて文章を結んだ。

過去にも、大統領の任期が終盤になると「むしろ〇〇〇の方がましだった」という慨嘆が出ていた。李明博(イ・ミョンバク)大統領のころも「盧武鉉(ノ・ムヒョン)のころがましだった」という声があり、朴槿恵大統領のころも「まだ李明博の方がまし」と言われた。5年単任期大統領制の限界だった。だから、退任を控えた大統領の側近らは「われわれの大統領が恋しくなる日が来るだろう」と言っていた。いつか名誉回復の日が来る、というわけだ。

 文大統領は少し前まで、盧武鉉・元大統領と比較されていた。「盧武鉉は韓米FTAなど国にどうしても必要なことはやったが、文大統領は何をしたか」というものだった。そこでは、文大統領が自ら出来の悪い姿を見せることで盧武鉉の名誉回復をした−という評価もあった。今では、弾劾された朴槿恵大統領まで名誉回復してやっている格好だ。4年前の「ろうそく集会」では「朴槿恵を選んで息子に申し訳ない」という声が出たが、今や「朴大統領に申し訳ない」と言っている。「ろうそく」を背負った文大統領に対する韓国国民の歓呼は、いつしか「経験したことのない最悪の政権」という言葉で覆われた。繰り返される歴史がひたすら恐ろしい。

イ・ドンフン論説委員

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