このところ、韓国は「未解決事件」共和国になっている。昨年、韓国各地の検察庁で未解決事件の数が前年比36%以上も増えたという。事件解決の端緒がほとんどない一般の未解決事件とは異なり、具体的真実とこれを裏付ける証拠があるにもかかわらず、おかしなことに結果が出ない事件がある。政権関係者らが関与した事件だ。事件が行き詰まるたび、そこには政権の影が差している。

 永久未解決と化した事件も既に出ている。朴元淳(パク・ウォンスン)前ソウル市長のわいせつ事件だ。加害者全員が「蒸発」したせいで被害者だけが残る、奇妙な事件になってしまった。加害者が消えるとき、いつも与党議員、警察と検察がそれぞれ役割を果たしていた。朴・前市長がわいせつ行為で告訴されたという事実を知る過程には、与党「共に民主党」の女性団体出身国会議員がいた。朴・前市長は自ら極端な選択をした。捜査を5カ月も引き延ばしていた警察は、朴・前市長のわいせつ行為と彼の側近である「ソウル市庁6階の人々」のほう助は全て起訴できないと言った。検察は、朴・前市長が告訴された事実を事前に漏らした疑いがある与党議員、検察高官と青瓦台(韓国大統領府)関係者にまとめて免罪符を分けてやった。被害者は「法的手続きを踏んで過ちへの謝罪を受けたり許したりできる全ての機会を剥奪された」と絶叫した。

 傷は癒えず、その傷をえぐる加害はさらに残酷だ。被害者を「殺人者として告発する」という、文大統領支持派の市民団体まで登場した。被害者の家族は「命の危険を感じている」という。青瓦台、政府と与党が被害者とその家族の保護に乗り出したという話は聞いたことがない。

永久未解決になるところだった事件もある。李容九(イ・ヨング)法務次官のタクシー運転手暴行は、メディアの報道がなければ埋もれていただろう。暴行の場面が収められたタクシーのドライブレコーダーの映像について、警察は「録画はされていなかった」と主張した。だが事実ではなかった。被害者が、暴行場面の収められた映像を見せると、担当捜査官は「見なかったことにする」と言って事件を伏せたという。明白な隠蔽(いんぺい)だ。権力の作用があったとか、警察があえてもみ消そうとしたという疑惑が生じることは避けられない。

 政権関連の未解決事件は山積みになっている。政権が捜査検事を「人事虐殺」し、捜査指揮する検察総長を「無理やり懲戒」した。検察が起訴して丸1年たった蔚山市長選挙工作は、裁判がきちんと行われていない。被告人13人の起訴内容は互いにつながっているのに、弁護人が「証拠を被告人ごとに分けてほしい」と主張して時間稼ぎばかりやっている。裁判所の定期人事異動で裁判部が変わったら、判決がいつ出るのか予想もつかない。青瓦台の元秘書室長、現職の民情秘書官に対する検察の追加捜査も事実上中断された。30年来の友人の当選が「念願」だという大統領の一言で青瓦台秘書室の七つの組織が乗り出した選挙犯罪なのに、大統領の前では捜査が止まる。選挙不正は民主主義の根幹を揺るがす深刻な犯罪だ。

 月城原発1号機データ操作、ライムおよびオプティマス・ファンド詐欺などにも政権関係者が複数登場したが、まだはっきりとした捜査の成果は出ていない。このままでは未解決事件リストに追加される可能性がある。政権が犯した違法を、新たに発足する高位公職者犯罪捜査処に送ってもみ消してしまおうとする動きも見られる。

 違法を永遠に伏せておくことはできない。朴・前市長のわいせつ行為は人権委が「被害者に性的屈辱、嫌悪を感じさせる性的言動でセクハラに該当する」と判定した。被害者の別の裁判でも「朴・前市長のわいせつ行為で相当な精神的苦痛を受けたことは疑いのない事実」という判決が出た。李次官のタクシー運転手暴行も映像が見つかり、再捜査が力を得た。真実は必ず明らかになっている。一つの過ちを覆い隠そうとして別の過ちを犯しては、罪が大きくなるばかりだ。

琴元燮(クム・ウォンソプ)論説委員

ソース:朝鮮日報/朝鮮日報日本語版【コラム】「未解決事件」共和国
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2021/02/06/2021020680026.html