>>1の続き。

ところが、韓国の政権が変わったからと言って、それも官民タスクフォース(TF)の検証という前例のない形式で、これを無効化したのだ。

ソウル大学国際大学院のパク・チョルヒ教授は、「政権によっては両国間の合意を手のひらを返すようにしかねないという不信を解消するためには、韓国政府が先にジェスチャーを取らなければならない」とし、「賠償問題など法的領域や民間領域に関することも、政府が率先して解決する用意があると明らかにする必要がある」と述べた。

文政権が挙げた韓日慰安婦合意の中で最も大きな問題点は「被害者中心主義の違反」だった。当事者の慰安婦被害者の立場を反映していないという趣旨だ。しかし、これは韓国政府が動ける空間を制約する原因にもなっている。

文大統領は昨年8月には「問題解決の重要な原則は被害者中心主義であり、政府は(被害者の)おばあさん達が大丈夫だとおっしゃるまで解決策を模索する」と述べた。(慰安婦被害者を称える日)

この言葉通りにするためには、先月の裁判所の賠償判決に沿って韓国内の日本政府の資産を現金化し、慰安婦被害者のための司法正義を完成させなければならない。また、慰安婦問題を国際司法裁判所(ICJ)に付託しようという李容洙(イ・ヨンス)さんの要求も受容しなければならない。

被害者中心主義を具現化するためには韓日関係の悪化を甘受しなければならず、日本との関係を解決するためには被害者中心主義を守るのが困難になるという自己矛盾の状況に陥ったわけだ。

東アジア研究院のソン・ヨル院長は「政府は今よりもっと積極的に被害者の意見を聞いて仲裁することで被害者中心主義という原則を実現しつつ、一方ではマクロな視点で国益と外交環境などに対する様々な考慮が必要だという点も同時に被害者を説得できるように努めなければならない」と指摘した。

外部の環境も大きく変わった。ドナルド・トランプ前大統領は韓日関係に大きな関心を持ったり、関与したりしなかった。2019年に韓国がGSOMIA(韓日軍事情報包括保護協定)を中断するとした後になってはじめて介入したほどだ。

日本との「強対強」の対立を選んだ文政府が反日感情を事実上、国内政治に利用してきたのも、このため可能だったという分析だ。

しかし、バイデン政権の外交哲学は、「米国の力は同盟から出る」という正統派に近い。実際、国務省関係者は「韓日関係ほど重要なものはない。協力深化の機会を模索する」(12日、ボイス・オブ・アメリカの論評)とし、傍観は終わったことを示す信号を送った。

韓国としては、日本に手を差し出すと同時に、米国に向けても「韓国は約束を破る嘘つき」と言って追い詰めようとする日本の論理を防御しなければならないという課題を同時に受け入れることになった。

ただ、米国の仲裁の意志を韓日関係の改善の機会として活用できるという意見もある。

梁起豪(ヤン・ギホ)聖公会大学日本学科教授は、「両国の関係改善のために、米国の積極的仲裁ほど強い推進力はない」とし、「これを契機に対話の足掛かりが設けられる雰囲気なだけに、韓国政府は歴史問題で一歩進んだ提案をするなど、前向きな態度を示す必要がある」と述べた。

>>おわり。