韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領にとって、ジョー・バイデン米大統領との米韓首脳会談(21日)は、「米国の北朝鮮政策修正」でも、「新型コロナウイルスワクチンの確保」でも特筆した成果を挙げられず、事実上の失敗で終わった。国内向けにはワクチンの委託生産契約を「Kバイオ」などと吹聴して自画自賛しているが、実態は「瓶詰め、ラベル貼り作業」だという。残り任期が1年を切り、「レームダック(死に体)化」が指摘される文氏。隣国の悲しき「K−」の実態を、ジャーナリストの室谷克実氏が考察する。

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 韓国人は、自慢すべきと考える韓国の事象に「K−」を付けたがる。おそらく「Kポップ」が始まりだが、やたらに増えたのは文政権になってからだ。文政権の手柄に「K−」を付けて呼ぶことで、韓国人に根深い愛国主義心情を刺激する意図が働いているようだ。

 しかし、日がたつにつれ、失敗した政策であることが明らかになったり、空念仏に過ぎないことがバレバレになったり…で、韓国人の中にも、自嘲の意味を込めて「K−」を語る雰囲気が出てきたようだ。

 文政権といえば、新型コロナウイルスの「K防疫」だ。端的に言えば「人権無視の検査・隔離政策」だ。文大統領は「K防疫」の成果を誇り「韓国が世界を先導している」とも述べた。

 韓国当局が発表する新規感染者や、死因別人口統計の数字が正しいとするならば、「K防疫」は依然として有効だ。慌てることはない。

 しかし、実際には血相を変えて、対米ワクチン外交に乗り出した。「5000万人分確保」「最低でも2000万人分」と言っていたが、バイデン米大統領の申し渡しは「55万人分」。

 それでも、文氏は「最高の訪米、最高の会談だった」と述べた。震怒を抑えて笑顔をつくって言ったのだろう。

 ワクチン外交失敗を覆い隠すように、韓国政府は「Kバイオ」を言い始めた。サムスン系のジェネリック薬品メーカー「サムスンバイオロジクス」が、米製薬大手「モデルナ」とワクチンの委託生産契約を結んだことを大々的に取り上げて、「グローバル・ワクチン・ハブ」への道が開けたとの大宣伝だ。

 「ワクチン生産の最終工程を韓国が担うことになった」と言えば、「躍進するKバイオ」だ。しかし、「生産の最終工程」とは、瓶詰めとラベル貼りのことだ。

 みじめ過ぎて保守系紙も、この子細を語りたくないのだろうか。「物足りなさ残るワクチン外交」と題する中央日報(2021年5月24日)の社説には、「瓶詰め」の話が全く出てこない。

ワクチン接種に使う韓国製注射器の性能も喧伝された。「K注射器」と名付けられたのもつかの間、注射器の内壁に異物が混入している事実が発覚し、回収になった。

 医療関連では「Kメディシン」「K新薬」も言われたが、すぐに消えた。残っているのは「Kビューティー」(美容整形)ぐらいだ。

 このところの韓国紙には、半導体のニュースがよく載る。車載用半導体の品不足もあるが、サムスンの相対的退潮が韓国全体に暗い影を落としているからだ。その沈滞ムードを打破するかのように飛び出した官製用語が「K半導体」だ。

 「2030年までに510兆ウォン(約49兆円)を投資」と勇ましい。が、この金額は民間企業の目標値を合算した数字にすぎない。

 より広範な経済構造改革として大統領が提唱した「Kニューディール」は、このところの新聞紙面には全く登場しなくなった。

 朴槿恵(パク・クネ)政権の時につくられた「Kフード」「Kツアー」も次第に使われなくなった。文政権下で生まれた「K民主主義」「Kプレミアム時代」「Kコーヒー」「K平和」は未熟のまま終わった。

 保守系紙の朝鮮日報(20年12月20日)が載せた造語「K自画自賛」は流行らなかったが、本質を突いた言葉だ。

 そういえば日本人がつくった「K−」もあった。「Kの法則」だ。もっぱらネットの書き込みで使われる言葉であり、「韓国と関わった企業・個人は没落する」という意味だ。(室谷克実)

夕刊フジ公式サイト 2021.5.27
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/210527/for2105270001-n1.html