>>1のつづき。

◆加害者・被害者が逆になった過去の論争

韓国司法府の強制徴用被害者賠償判決と慰安婦合意に対する現政権の対応が、日本政府の強い反発を招いただけでなく、日本国内で右翼勢力の声を高め、韓日の過去に対する修正主義的歴史観を浮き彫りにする結果につながった。

特に強制徴用判決後にあった日本の対韓国戦略製品輸出規制決定は、韓国国民の日本旅行拒否と日本商品不買運動につながった。日本国民の反韓・嫌韓ムードも高まり、日本で生活する韓国人が困難に直面している。反日・反韓の悪循環が続いている。

もう日本では韓国との過去に対する負債意識は薄れている。むしろ日本政府は「不可逆的」韓日慰安婦合意に基づいて設立された和解・癒やし財団を韓国政府が解体し、合意を違反したと批判している。

また、韓国司法府の徴用者賠償判決と慰安婦に対する日本政府の賠償責任判決が国際法違反だと主張している。今は過去の論争で加害者だった日本が被害者だった韓国に対し、あたかも日本が被害者で韓国が加害者だと主張するような状況になってしまった。

こうした状況で韓国政府もいくつかの案を模索しているが、これといった答えを探せずにいるという印象を受ける。

◆過去を政治の手段に利用すべきでない

我々が望む方向で問題を解決するのが難しいこうした局面で韓国が勝つ方法は、逆に過去の被害者としての寛容を見せることで我々の道徳的な品格と自負心を日本と国際社会に見せることだ。

例えば、徴用者賃金問題に関連し、国内的に非常に複雑で難しい過程があるが、我々が自らこの問題を解決し、もう日本に賠償を強要しないと明らかにする必要がある。そうしてこそ我々の道徳的な権威が高まり、日本政府と企業・国民も韓国人に大きな苦痛を与えた過去を深く省みるだろう。

今後、韓国政府は過去を政治的な手段として活用する誘惑から抜け出すことが求められる。また、韓日間で問題が発生した場合、理性的な判断よりも無条件に反日的な対応をするのが安全だという政府の認識も消さなければいけない。

振り返ると、歴代政権は韓日の過去に関連して国民感情をあおったり迎合したりする措置を取れば一時的には支持率は上がったが、結局は政権にプラスにならず韓日関係を悪化させる結果だけを招いたという批判を受けるケースがほとんどだった。

韓日の過去の問題は、最高指導者がオピニオンリーダーとなって国益を優先し、世論を先導していく努力をしなければいけない。

過去は国民感情が介入する揮発性が強い問題であり、最高指導者が国民感情とやや乖離があっても国益を優先する決断をする必要がある。政権レベルで問題の本質を国民に誠意を尽くして説明して理解を求めれば、大多数の国民はこれを受け入れるはずだ。

特に最近、地方裁が徴用者問題に関連する大法院(最高裁)の過去の判決を覆す判決があり、多くの国民に「過去の疲労」が内在するという点を考慮すれば、今は我々の政府が韓国の未来を考える方向で韓日関係に臨む好機だと考える。

◆金大中−小渕の共同宣言精神を回復させるべき

金大中大統領は世論の懸念にもかかわらず、日本文化の開放を勇断した。結局、日本文化の開放が大きな刺激剤となり、日流を上回る世界の韓流が誕生したのではないのか。日本を克服して勝つためには、日本と競争するだけでなく、交流して協力しなければいけない。日本が韓国を刺激しても反日感情の噴出だけが解決法となる韓国では日本に勝てない。

私が大使として在職したベトナムの政府は、韓国政府に対し、過去のベトナム戦争参戦に関するいかなる謝罪も補償も要求していない。痛恨の過去を乗り越え、ロールモデルの韓国の協力と支援を通じて迅速に国家を発展させるためだ。

もう、新政権になるほどマイナス遺産ばかりが増える韓日関係に終止符を打つ時だ。現政権の任期は1年も残っていないが、韓日関係が最悪の状態と評価される現時点で、新しい発想で韓日関係改善のきっかけを用意する努力を傾けるべきだろう。韓日は、金大中−小渕共同宣言の精神が歴史の裏に消えるのではなく、生きて呼吸しなければいけない関係だ。

イ・ヒョク/元駐ベトナム大使

>>おわり。