【ソウル=桜井紀雄】23日に開幕する東京五輪にも韓国は、歴史や領土をめぐって日本と対立する問題を持ち込み、スポーツの祭典に冷や水を浴びせている。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が開会式に出席するかどうかも確定しない中、日本当局者の不適切発言も重なり、悪化した日韓関係にはますます暗雲がかかっている。

韓国側がまず持ち出したのは、韓国が不法占拠する竹島(島根県隠岐の島町)の問題だ。東京五輪の公式サイト上の日本地図に竹島が表記されていることに反発し、知日派で知られる李洛淵(イ・ナギョン)元首相といった来年3月の大統領選の与党候補らが「五輪ボイコット」を主張する騒ぎとなった。

韓国側には、2018年の平昌冬季五輪で国際オリンピック委員会(IOC)の勧告を受け、北朝鮮と共同で用いた朝鮮半島の旗から竹島表記を削除した経緯がある。今回、日本側に削除を求めないIOCに不満をくすぶらせてきた。

そうした中、韓国選手団が東京五輪の選手村に掲げた応援の横断幕が17日にIOCの勧告で撤去された。豊臣秀吉の朝鮮出兵に抗した李舜臣将軍の言葉にちなみ「臣にはまだ5千万国民の応援と支持が残っております」と記されたもので、IOCは政治的宣伝を禁じた五輪憲章50条に反すると判断した。

韓国側は「IOCは旭日旗にも同じ条項を適用すると約束した」としている。大会組織委員会は、旭日旗は政治的な宣伝物に当たらないとの見解を示しており、日韓の認識の差が今後、問題化する可能性がある。

一方、在韓日本大使館の総括公使が韓国人記者に文氏の訪日問題について話した際、性的表現を用いたことも外交問題に発展した。韓国大統領選の与党有力候補、李在明(イ・ジェミョン)京畿道(キョンギド)知事はフェイスブックで「大統領をおとしめた」として日本に公式謝罪を要求。李洛淵氏も「韓国は大統領の訪日を肯定的に検討してきたが、日本は当局者の妄言で両国関係に冷や水を浴びせている」と批判した。

韓国側が首脳会談の成果や形式にこだわり、文氏の訪日が固まらない中、外交的こじれの責任を日本に転嫁してくる可能性がある。

産経ニュース 2021/7/18 18:29
https://www.sankei.com/article/20210718-IVTQILSG55PMXO2R3UKQI7PCLU/