東京オリンピック開催直前の7月下旬、私は韓国のある財閥系商社員とランチを共にしていた。

挨拶も早々、親しい関係の私たちの話題は、韓国選手団が選手村宿舎に掲げた垂れ幕
「臣にはまだ5000万国民の応援と支援が残っております」に移った。

私が、他国選手団も選手村宿舎に国旗や国名を記した横断幕を掲げていたが、
政治的内容とも受け止められるメッセージを掲げたのは韓国だけだということを指摘すると、韓国商社員は意外なことに素直に頭を下げた。

「あれは本当に申し訳ないと思う。韓国の国際感覚のなさが恥ずかしい。東京で李舜臣将軍のあの言葉を掲げるというのは、
ロンドンでジャンヌダルクの『私たちが戦うからこそ、神は勝利を与えてくださる』を掲げるようなもので、明らかに喧嘩を売っているでしょう。
韓国人の多くはあの垂れ幕を見て、ヤバいと思ったはずです」(韓国商社員)


しばらく雑談したのち、「そういえばあの虎の垂れ幕はどんな意味があるのか」と私が尋ねたところ、
韓国商社員の箸が止まった。ばつが悪そうな顔をした彼が「そんなに深い意味はないと思う」ととぼけたことを言うので、
あの横断幕の次に出してきた垂れ幕に意味がないわけがないと詰め寄り、垂れ幕についての日本メディアや識者の解釈を披露して、
「私はどの解釈にも納得がいかない」と伝えた。

すると彼は箸を置いて静かに私の目を見据えて、「この話を日本人に伝えるのは気が引けます」と口を開いた。私は無言で次の言葉を促す。

「韓国語で虎はなんと言いますか?」(前出の韓国商社員)

韓国語で虎は「ホランイ」だ。漢字語の虎は「ホ」と読むが、動物の名前としてはホランイが正しい。

「そうですよね。では、垂れ幕にはなんと書いてありますか?」(同)

私はスマートフォンを取り出し、急ぎ垂れ幕を検索した。すると、そこにはホランイではなく、見慣れない「ボム」という一文字が書かれていた。
ボムが降りてくる…。日本語のニュースで垂れ幕のことを知った私は、垂れ幕に書かれた文字を見て狼狽した。
ボムが虎を意味することは推測できるが、一般的に使われる単語ではないはずだ。

「そうです。ボムは韓国でも一般的には使いません。韓国語で『昔々』を表す『虎がタバコを吸っていた頃』という有名な例えでもホランイを使います。
ボムは諺でもほとんど使わない古語なんです。じゃあ、なんで韓国人も使わないボムを使ったと思いますか?」(同)

混乱した頭であれこれ理由を想像してみたが、これだと思う理由には辿り着けなかった。彼は一瞬、逡巡するかのように目を伏せたが、意を決して続けた。

「ボムを使った理由は私たちも分かりません。垂れ幕を作った大韓体育会が理由を公表してませんから。
ボムは諺でもほとんど使わない古語なんです。じゃあ、なんで韓国人も使わないボムを使ったと思いますか?」(同)

混乱した頭であれこれ理由を想像してみたが、これだと思う理由には辿り着けなかった。彼は一瞬、逡巡するかのように目を伏せたが、意を決して続けた。

「ボムを使った理由は私たちも分かりません。垂れ幕を作った大韓体育会が理由を公表してませんから。
ただ、一部ネチズンの間ではボムはBomb(爆弾)を意味する、つまり『日本に爆弾が落ちる』、過去を反省せずに韓国にマウンティングする日本には爆弾が落とされて当然と解釈されています。
流石にこれは韓国政府や国民の総意ではなく、一部の低レベルな意見ですが、これが日本に紹介されると韓国は間違いなく世界中から非難を浴びるでしょう」(同)

私は言葉を失った。あまりに酷い解釈に怒りを通り越して、この解釈が広まった場合の影響を考えてしまった。
ランチを後にしてスマートフォンで検索してみると、確かに彼が話したような解釈がヒットした。

わざわざ虎の部分を広島型・長崎型原爆に置き換えたコラージュ画像もある。もちろん、彼が話した『日本に爆弾が落ちる』という解釈は韓国政府・国民の総意ではない。
しかし、残念ながら一部とはいえ、韓国人の中にこのような考えがあることも事実だ。8月24日から始まる東京パラリンピックが残念な行為で汚されないことを祈らずにはいられない。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/23970

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