【北京=三塚聖平】中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)は26日から28日まで年次総会を開催する。加盟国・地域は開業当初の57から100超にまで拡大し、投融資案件も伸ばしている。中国色をできるだけ出さないようにして慎重に事業を拡大させているが、対中摩擦を抱える米国などでは引き続き警戒感が強い。

年次総会は、アラブ首長国連邦が主催。新型コロナウイルスの世界的な流行を受け、昨年に続きオンライン形式をとっている。

AIIBは2016年1月に開業し、これまでに103カ国・地域の加盟を承認している、中国は今も最大の3割を出資し、重要案件に関する拒否権を握る。中国の元・財政次官でAIIBの開業当初から総裁を務める金立群(きんりつぐん)氏が、今年1月から5年間の2期目に入っている。

陣容も拡大されており、16年末に79人だったスタッフは昨年末には316人になった。他の国際金融機関で経験を積んだ人材が多く、加盟国ではない日本人も採用されている。

開業から今月22日までの投融資は案件承認ベースで計147件、総額290億ドル(約3兆3千億円)。今年は39件で、20年は44件、19年は28件だった。

AIIBは、習近平政権の巨大経済圏構想「一帯一路」を資金面で支える存在だと欧米では見なされているが、中国政府の存在を感じさせないように事業運営を行っていることがうかがわれる。中国とインドは係争地域で両軍による衝突が発生するなど対立しているが、AIIBの国・地域別の投融資承認額で最も多いのはインド向けだという。

ただ、欧米各国による警戒は解消されておらず、中国の影響力に懸念を示す日本や米国は参加の見合わせを続けている。また、加盟国であるカナダでは、今年9月の総選挙で野党・保守党がAIIBからの脱退を掲げた。

産経ニュース 2021/10/26 19:14
https://www.sankei.com/article/20211026-LI6EPKIVUVMCBPAU3JUYHXFQJ4/