政府が、新型コロナウイルスの水際対策を緩和すると発表した。これで外国人留学生の入国が可能になるが、長期間入国ができなかったため、留学を放棄した若者も少なくない。日本で学びたいという意欲を生かす柔軟な対応と、配慮を求めたい。

 日本政府は今年一月から、日本人の配偶者がいるなどの「特段の事情」がある場合を除き、外国人の新規入国を全面的に禁止した。留学生のほか、技能実習生も含まれていた。

 大きな影響を受けたのは、留学生だった。出入国在留管理庁によれば、今年上半期に新規入国した外国人留学生は約七千人にとどまっていた。二〇一九年同期の約六万一千人と比較すると、88・5%もの減となった。

 入国のタイミングが合わず、日本への留学を十五カ月間、待っている人もいたという。入国を認められたのは国費留学生など、ごく一部にすぎなかった。

 留学生が、大学に進学する前に入学する日本語学校は、すでに経営に打撃を受けている。

 業界団体の調査によれば、入国制限が続いた場合、学生数の減少から52%の日本語学校が「事業の継続が不可能」と答えていた。

 入国が認められても、学生数の減少は続く。日本語教育に支障が出ないよう、政府は日本語学校への支援を検討すべきではないか。

 また、関係者によれば、日本への入国が実現しなかったため、日本語学習者が韓国や台湾、ベトナムなどで大幅に減少した。残念な結果というしかない。

 先進七カ国(G7)で、留学生などの新規入国者に厳しい入国制限を課すのは日本だけだった。

 米、英、仏などは、入国前のPCR検査や入国後の行動制限などで受け入れに踏み切っている。

 このため日本国内からは、ビジネス目的の短期滞在者も含め、規制緩和を求める声が出ていた。

 もちろん水際対策が今後も重要であることは間違いない。

 しかし日本で認められたワクチンの接種や、入国時の検査などの徹底で十分対応できるはずだ。

 日本で学ぶ海外の若者は、日本への理解を深め、将来、日本を支える人材にもなりえる。

 今後、新型ウイルスの再流行が起きた場合でも、一律な入国制限は避け、安定した留学生の受け入れを続けてほしい。

東京新聞 2021年11月8日 06時50分 https://www.tokyo-np.co.jp/article/141493?rct=editorial