【大連=渡辺伸】中国東北部の中核都市、遼寧省大連市で新型コロナウイルスの感染が広がり、市民生活や企業活動に影響が出ている。人口約74万人の地域が封鎖され、約100カ所の工場も停止した。市政府は隔離生活やPCR検査を市民に強要しており、不満の声も出ている。

大連市政府によると、11月4〜15日に約270人の市中感染者が確認された。感染を完全に抑え込もうとする「ゼロコロナ」政策をとる中国にとっては非常に大きな規模で、感染力が強いデルタ型が拡大の原因という。

人口約74万人の荘河地区で4日、冷凍倉庫の作業員に最初の感染者が出た。同地区では外部との交通を遮断し、住民の出入りを禁止した。市政府によると同地区には約100の水産加工工場があり「生産はすべて止まった」(水産会社幹部)。

感染者が出た地区の住民には、市政府によって隔離生活が強いられる。中国国営中央テレビ(CCTV)によると、大連では15日時点で約2万2000人が隔離中だ。隔離施設は198カ所にのぼり、複数のホテルが転用されている。「ホテル内にオフィスをもつ日系企業の社員は入室を禁じられ、自宅勤務となった」(30代の日本人駐在員)

「感染者が1人見つかった小学校では約700人の生徒と、その両親の全員がホテルでの隔離となった」(隔離中の40代中国人女性)。自宅隔離中の自営業女性、江さん(34)も「子供のおもちゃを買いに行けない」と不満を語った。

全市民は政府の指示で3〜4回のPCR検査を義務付けられた。市内では臨時のPCR検査場に長蛇の列がみられる。「毎回並ぶのに2〜4時間かかる。とても寒い」(30代中国人男性)。一方で「感染を防ぐために厳しい手法は仕方がない」と評価する声もあがる。ゼロコロナ政策を続ける中国で、自由を制限する強権体制は今後も続きそうだ。


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