安田 峰俊 2021/12/14

 ここのところ40日以上にわたり、私は53歳の中国人男性を追いかけ続けてきた。相手の名は薛剣(Xue Jian)、2021年6月に着任した中華人民共和国駐大阪総領事だ。

 ツイッター(@xuejianosaka)でやたらに暴言を発している中国人外交官──と書いたほうが、ピンとくるネットユーザーも多いかもしれない。彼は8月11日にアカウントを開設して以降、過激なツイートを多数投稿している。

 そこで、私が薛剣に面会を申し込んだところ、なんとまさかの快諾。10月20日に駐大阪総領事館内で長時間の取材に応じてもらえた。詳細は12月10日発売の『文藝春秋』2022年1月号に記したが、本誌では書ききれなかった話を記しておこう。




総領事館から援農活動まで徹底追跡

 取材当日、私はスマホやクレジットカード、免許証などデジタル情報を読み取れるものはすべてホテルに置き、現金と保険証だけを入れたGPSタグ付きの財布とデータを初期化したiPad1枚のみを持参。取材中は唾液が残る可能性を考えて水も飲まず、イスや机に指紋がつかないようにも気を配った。

 だが、出迎えた薛剣と2人の総領事館員に緊張感はまったく感じられなかった。のみならず、取材時の薛剣はなぜか私に対して「中国語が上手なんですね」「若い人が来て驚きました」と、そんな感想ばかりを口にした(理由は後述)。こちらのインタビュー内容は「中国の真の姿を見てほしい」と題して『文藝春秋』で公開している。

 もっとも、さすがに人権団体を害虫呼ばわりして西側の民主主義体制(=日本の国家体制)を否定する中国外交官の主張を、一方的に掲載するわけにはいかない。私は同誌上にもう1本、薛剣の過激なツイッター活動の背景を分析する記事「中国総領事、吠える」を寄稿している。

 彼は何者なのか。私は日中両国の多数の関係者を通じて、薛剣の生い立ちや過去の言動を調べ上げた。さらに駐大阪総領事就任後の活発な対外訪問に着目し、彼が立ち寄った関西各地の農園や寺院、動物園などの関係者や現場の目撃者にまで話を聞いた。




天安門世代のリベラル派がバリバリの反米言説
     ===== 後略 =====
全文は下記URLで
https://bunshun.jp/articles/-/50597