昨年、中国で国家公務員試験を受験する人が初めて200万人を突破した。年々、応募者数は増加しているという。中国で公務員人気が高まっている理由とは何なのか。背景をひもとくと、経済の変化に伴い、働く人にとって厳しい時代が訪れている中国の実情がよく分かる。(日中福祉プランニング代表 王 青)

● 中国で公務員志望者数が増加 1人の枠に2万人の応募も

 昨年11月28日、中国で年に一度の国家公務員の筆記試験が行われた。この国家公務員の試験(中国語の略称:「国考」)は、毎年10〜11月の間に実施されている。

 10年ほど前から志願者数が年々増えており、この時期となると、「国考」への注目度は高い。昨年は、書類審査を経た受験者数が初めて200万人を突破。それに対する採用枠は約3万1200人で、倍率はなんと約64倍である。

 4年制の大卒や大学院卒が条件とされていたり、経験者優先だったりするが、各地域で受験資格は若干異なる。例えば、チベット阿里地区の郵便局では、大学の専門や経験の有無、党員かどうかなどを問わない。このため、「一等局長以下」のポストで、採用数1人に対して、応募数は2万人に上り、今までの公務員試験では最高倍率となった。

 なぜ今、中国の若者はこれほどまでに国家公務員になりたがるのだろうか、他の職業と比べて、どこが魅力的なのか。

● 新卒人数の増加で就職難が顕著に 「高学歴貧乏」になってしまう人も

 公務員は、中国語で「鉄飯碗」ともいう(「親方日の丸」に近い意味)。鉄の碗のように、一生安泰で失業する恐れがないということだ。実際、毎年0.05%の離職率であるというデータがある。よほど自ら過ちを犯さない限り、職を失うことはめったにない。

 また公務員の次に人気の就職先は、国有企業だ。「2021中国重点大学新卒就活状況報告」(国家重点大学とは国が認める権威のある大学、約100校しかない)によると、79%の学生が、国有企業での就職を望んでいる。

 そのほか、これまで若者の眼中になかった教員資格も昨年下半期における志願者は900万人以上に上っていることも明らかになった。若者が、「安全・安定・安泰」の職業を求めるようになってきた証しである。

 近年、中国では大学新卒の人数が年々増えてきて、就職難が顕著になってきている。

 中国教育部発表の統計によると、昨年の新卒者は909万人に達し、最高記録となった。今年は1000万人を突破すると予測されている。ちなみに、2000年には100万人だった。20年強で約10倍増えたことになる。

 これまでは景気が良くて、就職はそれほど難しくなかった。名門大学を出れば、国家機関や有名な大手企業に就職ができて、夢をかなえられた人も多かっただろう。ところが、ここ数年は経済成長にも陰りが出てきているため、雇用市場が大卒を吸収しきれなくなってきている。

(略)

こういう時代だからこそ、安泰とされる公務員を希望する人が増えているのだ。

 ただ、ここに来て、その公務員すら、それほど「安全・安心」とはいえなくなってきている。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、休み返上で働かされるなど、民間企業より忙しいケースも少なくない。さらに、地方政府では財政悪化により、減給が始まっている。就職難、そしてその後の人生設計の不透明さは深刻さを増すばかりだ。

 中国では近年、毎年のように「今年はこれまでの10年で一番悪い年だが、これからの10年では一番良い年かもしれない」といわれている。これが現実になる可能性も決して小さくはない。

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