アジア安全保障会議(シャングリラ対話)に合わせて行われた日中防衛相会談は、岸信夫防衛相が中国の一方的な現状変更の試みに自制を促す一方で、中国の魏鳳和(ぎ・ほうわ)国務委員兼国防相は表立って強く反発することはなかった。今年は日中国交正常化50年の節目。今後、日中外交が活発化することを見据えた腹の探り合いの様相となった。

【表】最近の中国・ロシア軍による日本周辺での動向
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「ニーハオ」

日中防衛相会談の会場となったシャングリラホテルの一室。魏氏は笑顔で岸氏を出迎えて握手を交わした。会談冒頭、魏氏は「初めて対面でお会いすることができて光栄だ。2国間の協力関係を強化するとともに信頼および両政府のコンセンサスに基づいた関係を展開していきたい」と呼びかけた。「日中間の安全保障上の懸念」を伝えた岸氏の挨拶とは対照的だ。

アジア安保会議で日本政府が警戒したのは、岸田文雄首相が基調講演した後の質疑応答だ。8年前に安倍晋三元首相が講演した際、中国軍関係者が靖国神社参拝に関して「先の大戦で日本軍に中国人は殺された。その魂にどう説明するのか」と質問したためだ。

今回も中国軍関係者がマイクを握ったが、質問は日中国交正常化50年を踏まえ、日中関係の展望を問う内容だった。外務省幹部は「本国の意向を受けた質問だと思うが、ベーシックな質問だった」と肩透かしをくらった格好だ。

日本へのソフト路線を印象付ける一方、会談で中国側は、東シナ海での一方的な現状変更の試みに自制を求めた岸氏に対し、軍事行動を正当化したとみられる。また、中国は別の場所では明確に自国の主張を展開している。魏氏は12日のアジア安全保障会議での講演で、台湾問題について「統一は誰も阻止できない」と強調。法に基づく「自由で開かれたインド太平洋」を「対立を生んでいる」と批判した。

発言する場所によって内容を変える中国に外務省幹部は警戒する。「中国が今回、ソフトだったからといって、ずっとそうとは限らない。この先どこに『崖』があるか分からない」(広池慶一)

Yahoo!Japan/産経新聞 6/13(月) 21:06 配信
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