● 中国の公務員が減給にあえぐ 厳しい財政が続く中国

 6月に入って、上海でおよそ2カ月間続いたロックダウンも、実質的に解除された。

 道路にはようやく車が出てきて、公園や緑地でお弁当などを食べる人の光景も再び見られるようになった。しかし、市民の気持ちはまだ梅雨時の空模様のようで、晴れやかさはない。

 そんな中、公務員の減給状況が書かれた投稿が突然、中国国内のSNSで拡散された。その内容は、「上海市の公務員で、処長級の年俸は、35万元(約698万円)から約20万元(約399万円)」とか「北京や天津などの大都市では20%近く給与がカットされた上に、さまざまな手当も廃止された」「全国で最も裕福といわれる浙江省、広東省の公務員所得も約25%カット」など具体的な内容だった。

 公務員の減給実態についての中国政府側の公式報道はないので、投稿内容の真偽は定かではない。インターネットに流れたこうした投稿は削除されてしまったが、中国政府はその内容について否定してはいない。数字の正確さはさておき、どうやら都合の悪い事実としては確かに存在しているのではないか。 このような中国各地の「賃下げラッシュ」の情報が出てくる背景には、地方政府の台所事情がある。地方政府が財政支出の負担を軽減するため、成果給を一部カットするなどの減給措置の実施に踏み切ったのだ。

● 公務員手当が支給されず、廃止される都市も 民間企業では減給を受け入れない従業員はクビ!?

 公務員の待遇が良い地域ほど、給与カットの影響は大きくなる。逆に経済があまり発展していない地域はもともと成果給があまり高くないから、その影響が限定的ということだろう。

 手当の支給が遅延する現象も、よく見られる。

 例えば、広東省の一部地域の公務員に対する手当支給が遅れていて、公務員の手当は2カ月、教員は1カ月猶予されたりしているという。広東省・深セン市では、数年前に導入された大卒への定住手当1万5000元(約30万円)、修士課程卒への定住手当2万5000元(約50万円)が廃止された。深セン市は中国で最も財政的に豊かな地域として知られるのだから、他の都市は推して知るべしだ。

 こうした減給は公務員に限ったものではなく、民間企業ではより広く見られる。しかも、今年に入ってオミクロン株が感染拡大してからより深刻化している。企業は生き残りをかけて、従業員に自主減給申請書の提出などを求めたりして、人件費を減らそうと躍起になっている。

 なかには50%もの大幅な「自主」減給を強硬に求める企業もあれば、「退職したときに給与の減額分を返す」と約束する企業もある。減給額が多い従業員のポストは守るが、減給に積極的に応じない従業員は「自主辞職」を求められてしまう。50%の減給を受け入れない従業員に対しては、会社を去ってもらう作戦を展開している企業もかなりある。

(略)

 このように減給とリストラの脅威にさらされている若い社員らが、生活費が高い上海などの大都市を脱出するケースも増えた。

 中国メディアによると、5月16日、上海のロックダウンが一部解除された初日、上海を脱出した人の数は約7000人だった。その後も、毎日1万人ぐらいが上海脱出の道を選んだ。今のところ、上海を出て、広州、合肥、武漢などに向かった人が多いようだ。

 合肥の主要幹部は、「上海から脱出してきた人は大事なお客さん」と話し、家族同然だと上海脱出組を持ち上げる。合肥は心から歓迎し、決して門前払いはしないと言って、「上海脱出組」を積極的に受け入れた。

 武漢も魅力的な隔離政策を打ち出して、上海の脱出組を受け入れる。たとえば、「隔離期間中の関連費用は一切、無料」などと宣伝して、上海からの脱出組の人々の目を同市に向けようと必死にアピールした。

 上海から脱出した人たちは、地方都市から見れば、逃してはならない貴重な人材だ。だから、彼らはたちまち、主要都市で展開される熾烈(しれつ)な人材争奪戦の対象となった。経済発展や人材誘致などにおいて、ずっと優位な地位に立っていた上海だったが、ロックダウンを機に、完敗した。

莫 邦富
https://news.yahoo.co.jp/articles/c8f173ce95e6b8e2f87da41157653b68bdc5fa9d?page=1