今年3月、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地の打ち上げ台に立っていたロシアの宇宙ロケット「ソユーズ」から太極旗(韓国国旗)が消えるという出来事が起こった。

宇宙産業では慣例上、搭載する衛星の製造国の国旗をロケットに付ける。

同ロケットには当時、衛星を作ったワンウェブ社の取締役会に参加している韓国・米国・フランスなど6カ国の国旗が付いていたが、後にロシアが中立の立場を取るインドを除く国の国旗を白いテープで覆ってしまった。

ウクライナ侵攻に対する西側諸国の経済制裁に反発し、ロシアが衛星打ち上げを拒否したのだ。

それから3カ月後の今月21日、全羅南道高興郡にある羅老宇宙センターでは、胴体に太極旗がはっきりと描かれた初の韓国国産宇宙ロケット「ヌリ号」が打ち上げられた。

忠南大学航空宇宙工学科のホ・ファンイル教授は「ウクライナ侵攻は衛星の自力による打ち上げがどれほど重要かをあらためて気付かせてくれた」「自力打ち上げは宇宙独立国につながるものだ」と語った。

もしそうならば、ヌリ号打ち上げ成功で、今や韓国も宇宙独立国になったと言えるのだろうか。残念ながらそうではない。現時点ではヌリ号が当初の目標としていた1.5トン級の実用衛星は打ち上げられない。

技術が不足しているのではなく、米国の国際武器取引規則(ITAR)で自国の部品が入った人工衛星や宇宙船を他国のロケットで打ち上げることについて制限しているからだ。

ITAR制限品目の代表例は、衛星が宇宙空間で位置を把握する際に使う中核部品である米国製ジャイロスコープだ。

言い換えると、苦労して自動車を開発したのに、人を乗せられないのと同じだ。ヌリ号は来年からあと4回打ち上げられるが、すべて商用衛星に及ばない小さな衛星しか載せられない。

結局、真の宇宙独立国になるには、すべての衛星の部品を自国で開発するか、あるいは一日でも早く米国からITAR例外国として認められなければならない。

日々発展する宇宙産業において完全国産化は不可能だ。つまり、外交的能力を総動員した方が近道だと言えるということだ。

宇宙学界では、先月の韓米首脳会談でITAR問題が取り上げられると期待していたが、実現しなかった。しかし、ヌリ号の打ち上げが成功したことで、あらためてITAR問題が予想よりも早く解決するかもしれないという楽観論が強まっている。

韓国が米国の宇宙開発の役立つという信頼を確実に得られれば、米国も友好国である韓国が苦労して製造した宇宙ロケットを使えるように協力してくれるだろうとの期待感からだ。

事実、米国は1987年の「大量破壊兵器の運搬手段であるミサイル及び関連汎用品・技術の輸出管理体制(MTCR)」発足前に宇宙ロケット技術を確保した主要8カ国については、ITARの例外と認めている。日本もこれに含まれている。

まずは宇宙ロケットを持っていなければ交渉の余地がないということだ。最近は宇宙関連担当部処(省庁)である科学技術情報通信部だけでなく、国防部や外交部もITAR問題解決に前向きな姿勢を見せている。

今こそ政府が科学外交でヌリ号を支えるべき時だ。


李永完(イ・ヨンワン)科学専門記者

朝鮮日報/2022/06/26 05:01
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