就任100日で危険水域、文在寅の逮捕が先か、尹錫悦の弾劾が先か
日本企業の資産現金化を大統領が阻止すれば、ろうそく集会の再燃も

(羽田 真代:在韓ビジネスライター)

2022年8月15日、第77周年光復節(日本の植民地支配からの解放記念日)で、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の演説があった。

大統領就任前から「親日派」と言われてきた尹大統領が、大統領就任後初の光復節演説で何を語るのか注目されていたが、日韓関係については、「韓日関係の包括的な未来像を提示した金大中(キム・デジュン)・小渕共同宣言を継承し、韓日関係を早期に回復、発展させていく」と語るにとどまった。

「金大中・小渕共同宣言」とは、1998年10月に宣言された「日韓共同宣言 21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップ」のことだ。彼は就任前から一貫して、日韓関係を改善させたいと願い、尽力している。

少々余談となるが、尹大統領の演説の中には何度も「日帝強占期」というワードが登場する。

加えて、「日帝強占期において殉国先烈と愛国志士をはじめとする全国民が共に打ち込んだ独立運動は1945年のまさに今日、光復という実を結んだ」「祖国の未来が見えなかった真っ暗な日帝強占期に自らの命を投げ出して国内外で武装闘争を展開した人々、またノブレス・オブリージュ(財力、権力、社会的地位の保持には責任が伴うこと)を実践して武装独立運動家を育てた人々のことを考えると、今でも胸がいっぱいになる」といった内容までも語られた。

親日派と言われていても、尹大統領の歴史観は一般的な韓国人と同様で、演説内容は歴代大統領たちとさほど変わらない。違いがあるとすれば、保守派は革新派よりも過去の国家間の約束事を尊重する傾向にあるということくらいだ。

前任の文在寅(ムン・ジェイン)大統領も、2021年の光復節演説時には「韓日両国が知恵を集めて困難を共に克服し、隣国らしい協力の模範を示せることを期待している」「対話の扉を常に開いている」として日本に対話を呼びかけた。

日韓関係を史上最悪にまで悪化させた張本人は文前大統領だ。だから「どの口が言うのか」と、自分本位な彼の主張に我々日本人は腹を立ててきたわけだが、日本と対話をして日韓関係を改善させるという党の方針は革新派であっても、保守派であっても、ここ3年間はそれほど違いがない。

●尹大統領の演説に声を上げた元慰安婦
文前大統領の2021年時の演説内容と、尹大統領が今回演説で日本に対して述べた言葉に大きな差はない。

日韓間で長い間、問題になっている徴用工問題や慰安婦問題に関しても、文大統領は2021年の演説で、「ただすべき歴史問題については、国際社会の普遍的な価値や基準に合った行動と実践で解決していく」と、徴用工や慰安婦という単語を使うことすら避けた。

ちなみに、2020年の演説時には徴用工問題を挙げて、「いつでも日本政府と向き合う準備ができている」と、この時は徴用工という単語を使用して対話姿勢を表明している。

尹大統領も、就任後初の光復節演説では、徴用工や慰安婦という言葉は一切使用しなかった。

過去3年間、両政権ともに当たり障りのない演説をしてきたわけだが、彼らを見守る旧日本軍慰安婦被害者の李容洙(イ・ヨンス)氏の反応は違った。

この3年間、慰安婦問題について両政権から言及はなかった。だが、李容洙氏は文政権を批判することはなかった一方で、尹大統領には以下のように怒りを露わにした。

「なぜ光復節に日本との関係改善の話だけをし、解決されていない歴史問題と慰安婦問題に対する言葉は一言もないのか」
「日本がどれほど歴史をねじ曲げ、私たちの名誉を踏みにじろうと、日本の機嫌を取ることの方が重要なのか。それが自由と人権、法治を尊重することなのか」
「日本の反省と謝罪が先だ」

李容洙氏の場合、光復節の10日前に米ペロシ下院議長に面会を求めたが、実現しなかったという憤りもあったのだろう。

慰安婦団体が光復節の演説内容を踏まえて政権を批判したのは初めてのことだ。日韓関係改善を望む尹政権に対して、当たりが強いのは間違いない。

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71448