抑制されるアメリカの需要

 足許、アジア新興国の輸出にブレーキがかかり始めた。

 特に、10月、中国のドル建て輸出が前年同月比で0.3%減少した。

韓国の輸出も同5.7%減だ。

 シンガポールの輸出増加ペースも鈍化している。

 その要因の一つとして、夏場以降、米国の輸入の増加ペースが鈍化している。

 世界経済を下支えしてきた米国の個人消費の増加ペースは、徐々に弱まっている。

 11月のFOMCまで4回連続でFRBは0.75ポイントずつ追加利上げを行った。

 徐々に、米国の需要は抑制されつつあるようだ。

 それでも、米国の労働市場は過熱気味に推移している。

 インフレ鎮静化のための金融引き締めは長引く可能性が高い。

 また、中国では先行き不透明感の高まりによって消費者の節約志向が強まっている。

 その状況下、10月後半以降の米国株式市場では株価が反発した。

 依然として先行きを楽観する投資家は少なくないようだ。

 しかし、FRBの金融引き締めによって米国の個人消費は減少し、世界的に貿易取引が減少する可能性はむしろ高まっている。

 中国などの輸出減少は、世界的な景気後退リスクが追加的に高まっていることを示唆する。

鈍化するアジア新興国の輸出

 10月、中国の輸出が予想に反して減少した。

 それは、世界経済の今後の展開にとって軽視できない変化だ。

 最も重要と考えられるのは、米国の個人消費の増加の勢いが、徐々に弱まり始めたことだ。

 昨年秋以降、“ブラックフライデー”を控える中で米国の個人消費は大きく盛り上がった。

 その背景として、連邦政府による失業保険の特例措置などによって、家計の貯蓄率が一時的に押し上げられたことがある。

 それに加えて、経済と社会がウィズコロナに向かう中で、サービス業などで人手不足が顕在化した。

 企業は人手確保のために賃金を積み増した。

 個人消費の勢いは増した。

 その結果、昨年は年末商戦が近づくにつれて中国からの雑貨や玩具などの輸入が急速に増えた。

 あまりに強い需要を国内の供給力で満たすことができず、本年1~3月期の米実質GDP成長率はマイナスに陥った。

 しかし、夏ごろから米国の輸入増加ペースは鈍化している。

 その要因として、FRBによるインフレ鎮静化が遅れ、結果的に“3倍速”の追加利上げが続いたことは大きい。

 徐々にではあるが、米国の個人消費の勢いは弱まり始めた。

 その結果、中国やアセアン地域などの輸出が減少している。(真壁 昭夫)
 
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