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海上自衛隊のP1哨戒機が韓国海軍艦艇から火器管制レーダーの照射を受けたとされる問題で、防衛省が公表した映像の一部=防衛省提供

韓国メディアによれば、韓国国防省の副報道官は11月17日午前、2018年12月に起きた韓国海軍艦艇による海上自衛隊哨戒機へのレーダー照射疑惑について「当時、韓国軍のレーダー照射はなかったという立場を改めて申し上げる」と述べた。しかし、当時、日韓双方から取材した立場でいえば、「そりゃないよ、韓国さん」というのが正直な心情だ。(牧野愛博)

◆レーダー照射疑惑、韓国の苦しい言い訳

事件は2018年12月20日、能登半島沖で発生した。韓国海洋警察庁と韓国海軍駆逐艦が遭難した北朝鮮漁船の救助作業中、海上自衛隊の哨戒機が接近。駆逐艦から火器管制レーダーを照射されたとされる事案だ。

日本は問題が発生した翌21日午後に、韓国国防省にレーダー照射問題の発生を通報し、対応を求めた。この時点で、韓国国防省と韓国軍合同参謀本部は問題の発生を認識していなかった。

日本側の通報から約3時間後、韓国国防省は「レーダー照射の事実はなかった」という見解を日本に伝えた。ただ、韓国国防省は同時に「この問題については、しばらく非公表とし、韓日双方の実務者協議で解決を図りたい」と伝えてきた。

韓国軍の元将校は当時、このやり取りについて次のように語った。

「おそらく、駆逐艦の艦長に電話か何かで問い合わせた結果を伝えたのだろう。しかし、駆逐艦の火器管制レーダーを照射したかどうかのデータを確認する余裕がなかったので、はっきり結論を出すまで、事実を外部に伏せておきたかったのではないか」

実際、韓国側は非公式の協議で一時、「火器管制レーダーではなく、捜索用レーダーを使っていたところ、誤って哨戒機に当ててしまった」という説明もしていた。

また、12月24日の記者会見で、韓国国防省は、海自哨戒機が艦艇の真上を通過する「特異な行動」をとったため、レーダーではなく、「光学カメラ」を向けたとも説明した。火器管制レーダーと光学カメラは近接して装備されているため、「海自が、カメラを向けられた事実をレーダー照射と誤解した」と主張したかったようだ。

もちろん、こうした言い訳はかなり苦しい。当時の自衛隊幹部によれば、海自哨戒機にはレーダー照射の警報音が鳴り響いていた。計器はウソをつかない。

また、当時のビデオをみると、天候は晴れていて、捜索対象の漁船は目視できるすぐそばにいた。そこで「捜索用レーダーを使っていました」というのはかなり無理筋な説明と言える。

「光学カメラ使用説」も、2019年1月4日に韓国側が公開した映像には、光学カメラが撮影した画像が含まれていなかった。

◆日本側の素早い公開で追いつめられる

ただ、この事件で不幸だったのは、韓国がこうして、ぐるぐる頭を回しているうちに、日本が21日午後7時から、岩屋毅防衛相が記者団に対してレーダー照射の事実を公表する段取りを決めてしまったことだ。

後日、側聞したところによれば、防衛省内には慎重論もあったが、首相官邸に報告したため、官邸の意向もあり、早めの公開になったという。

当時の自衛隊関係者の一人は「あのとき、もう少し、官邸に報告するのを遅らせ、韓国に考える時間をあたえてやれば、あんなに興奮することもなかったと思う」とも語っていた。

だが、首相官邸の知るところとなり、すべてを公表したことから、韓国側には「レーダー照射の事実を隠すウソつき」というレッテルが貼られた格好になった。

韓国は猛烈な反撃に転じた。韓国は、翌2019年1月2日の国家安全保障会議で「強力な対応」を確認。1月4日には、「海自哨戒機が人道目的で活動中の我々の艦艇に対して威嚇飛行した」と主張する映像を公開した。

この時点ではよく自衛隊も耐えていた。自衛隊は当初から、再発防止と原因究明は求めていたが、あえて謝罪は求めていなかった。北朝鮮や中国を利するだけという判断だった。

(続く)

朝日新聞社
11/17(木) 22:50配信
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