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(写真:朝鮮日報日本語版) ▲写真提供=青瓦台

 飼育・管理費用250万ウォン(約26万円)をくれないという理由で、北朝鮮の金正恩総書記から贈られて一緒に暮らしていた「豊山犬」2匹を文在寅前大統領が国に返した。

 飼うことができる法的根拠が設けられていたのにもかかわらず、費用を口実に返すというのは非常識だ。世界の「大統領経験者」のうち、文前大統領ほど税金でとてつもない額の支援を受けている人物は少ないだけに、なおのこと常識が問われている。

 韓国は米国と共に法律で大統領経験者の支援を保障する数少ない国だ。しかもある意味、条件が米国よりも良い。米国は長官の年俸と同水準、韓国は現職大統領の年俸の95%を与える。韓国の長官の年俸は大統領の約60%に過ぎないので、米国に比べて待遇がいいと言える。

 この基準により、文前大統領は月に1390万ウォン(約147万円)を年金として受け取っている。これほどの年金を受け取るには、年金保険料をいくら払わなければならないのか、ある金融会社に計算を依頼した。すると、「30年間にわたり毎月1100万ウォン(約117万円)程度を支払えば可能です」という答えが返ってきた。

(中略)

 韓国は憲法(第85条)で大統領経験者への礼遇を明記しているまれな国でもある。軍事独裁時代だった1987年に書き加えられた。これに関連して問題があると指摘し続けている西江大学公共政策大学院のイ・ギョンソン教授は「チリを除き憲法で定めたケースは見つからなかった」と言った。

 同教授は先日の電話取材に「命を犠牲にした公職者や義人より、選挙で選んでくれといって仕事をすることになった大統領経験者の方が礼遇されるのは妥当なのだろうか」と問いかけた。「大韓民国憲法第11条2項は『社会的特殊階級は認められない』と規定している。王政を捨てた韓国が、死ぬまで税金で優遇する大統領経験者という特殊階級を憲法で保障するとは。権威主義政権の痕跡が放置され、残ってしまった汚点だ」とも言った。国会議員の年金はこうした問題により10年前に既に廃止されている。

(中略)

 大統領経験者のほとんどがトルーマンのように頑固でも、貧しくもない今、米国では退任した大統領たちが受け取る恩恵を減らそうという声が高まっている。講演などで稼いだ収入が一定の水準を超えた場合、年金を削るか、あるいは警護費用を削るかするという法案が時おり上程される。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は年金改革を推進し、その条件に基づき大統領年金(1カ月約800万ウォン=約84万円)の全額削減を掲げた。だが、韓国は逆に大統領経験者の恩恵を増やし続けている。韓国の大統領の方が他国の大統領よりも優秀だという話は聞いたことがないのにもかかわらず、だ。

 文前大統領の資産は25億6000万ウォン(約2億7000万円)だ。預金だけで12億ウォン(約1億2600万円)ある。資産家である文前大統領の通帳には毎月、多額の非課税大統領年金が振り込まれる。法律により病院代・旅行代・警護費・交通費・通信費など、とてつもない恩恵をおまけとして受け取っている。

 ほかの大統領経験者たちがこの世を去ったり、資格を奪われたりしているため、この恩恵を完全な形で享受する人物は文前大統領だけだ。その文前大統領が「約束していた養育費(飼育費)をなぜくれないんだ」と言って、情が移った犬を捨て犬の身の上にした。そうしておきながら、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「フェイスブック」には次の通り書いた。

 「これまで養育(飼育)に費やされた人件費や治療費を含むすべての費用を退任した大統領が負担してきたことを知っているのでしょうか。むしろ感謝すべきでしょう」。この言葉を少し変えてお返ししたい。「大統領経験者夫妻の安楽な余生に費やされる年金や人件費や治療費を含むすべての費用を国民が負担していることを知っているのでしょうか。むしろ感謝すべきでしょう」

金信栄(キム・シンヨン)記者

11/20(日) 7:15配信
朝鮮日報日本語版
https://news.yahoo.co.jp/articles/22264f1d32e636ae9dec8948fcd43fc8479dc2b1