?ワシントンD.C.で春になると華やぐ場所といえば、
ポトマック川に隣接する入江、タイダルベイスンだ。
ここに咲き乱れる桜は、この季節の風物詩となっている。

?1884年、殺風景だったこの地に桜を植えようと提案したのは、
ワシントン在住の女性ジャーナリスト、エリザ・シドモア。
外交官だった兄を訪ねて来日した彼女は、隅田川の桜並木の美しさに感動。
30年近くもアメリカ政府に桜の植樹を陳情し続けたという。

?その活動を後押ししたのが、第27代大統領、ウィリアム・タフト夫人のヘレン・タフトだ。
彼女は桜の苗木の購入を先導。タイダルベイスンに桜並木を造る計画は、一気に実現へと向かった。

?ついに1909年、日本から2000本の桜がワシントンへと送られた。
だが、到着した桜は病害虫に侵されており、すべてが焼却処分に。

以降、健康な苗木を育て、アメリカ国内の輸送は冷蔵貨車を使うなど、
病害虫に侵されないよう綿密な搬送計画が立てられ、
3年後、3020本の桜がふたたびワシントンへと届けらた。

?現在、ここに見事な桜並木があるのは、エリザの熱い思いがあってこそ。
横浜外国人墓地にある彼女の墓碑の傍らには、1991年にポトマック河畔から
里帰りした桜が植えられている。