長年、「親中派」と目された外務省がいま、大きく変わりつつある。インテリジェンス分野を強化するとともに、中国の覇権主義に対抗する動きを強めているのだ。

毎年8月になると、各省は概算要求、つまり来年度に取り組む政策とその予算の概算を公表する。

外務省が公表した「2023年度概算要求の概要」によれば、総額は前年度比15・3%増の7961億円だ。その項目を見ると、《日台関係の推進》といった、中国が激怒しそうな事項が明記されている。

「親中派」と噂される林芳正外相のもとで、外務省は堂々と日本と台湾との関係推進のための予算を計上しているわけだ。

台湾以外にも、中国を念頭においた項目が目につく。

《太平洋島嶼(とうしょ)国を含む開発途上国の経済的自律性の向上、日本及び開発途上国のサプライチェーン強靱(きょうじん)化に資する支援》というのは、中国に対抗して日本が、質の高いインフラ整備や海上保安能力構築の支援を行うというものだ。

第二次安倍晋三政権以降、中国海軍の南シナ海進出に対抗してフィリピンを始めとするアジア諸国の海上保安能力構築を支援してきたが、その支援をさらに強化するというわけだ。

《経済的威圧への対応に関する調査に必要な経費》というのも注目だ。

中国は巨大経済圏構想「一帯一路」のもと、途上国へのインフラ整備を支援してきた結果、いまや多くの国が中国に対して巨額の債務を抱えていて、その総額は90兆円を超えると言われている。

しかも、中国の対外融資は不透明かつ不公正であるとして国際社会でも問題視されるようになっている。

その代表例が、スリランカの「債務の罠」だ。インド洋の要衝であるスリランカのハンバントタ港は中国の投資によって整備されたが、巨額の債務返済に窮したスリランカは17年、運営権を中国企業に譲渡し、事実上、「中国の港」と化したのだ。

中国は経済支援を使って「経済的に威圧」し、相手国の港湾施設などを軍事利用しようとしているのではないか。そうした疑念から日米欧などの先進国は、途上国の債務問題に取り組むようになった。中国による「経済的威圧」の実態を調査・解明し、国際ルールに違反した債務を帳消しするか、契約条件を修正するよう中国に求めるようになったのだ。

11月12日、カンボジアにて開催された日本とASEAN(東南アジア諸国連合)による首脳会議でも、この「経済的威圧」が話題になった。岸田文雄首相が経済的威圧への深刻な懸念を表明したからだ。いつもならば口先だけの話だが今回、外務省は「経済的威圧」の実態を調べるインテリジェンス予算を計上している。

中国による「債務の罠」からアジアを救え。岸田首相と外務省の奮闘に期待したい。

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