政府が今月中旬に改定予定の「国家安全保障戦略」など安保3文書案の全容が判明した。同戦略には、台湾情勢に関して「台湾海峡の平和と安定は、国際社会の平和と安定と繁栄に不可欠」だと明記。日本を取り巻く安保環境を「戦後、最も厳しく複雑」と表現し、「自由で開かれた国際秩序が死活的に重要」だと強調している。

 国家安保戦略は外交・安保政策の基本方針で、現行文書は2013年12月に策定された。自民、公明両党が改定に向けた大詰めの協議を行っており、政府は16日にも閣議決定する。与党に9日、国家防衛戦略(現・防衛計画の大綱)と防衛力整備計画(現・中期防衛力整備計画)の案とともに提示された。


 中国が軍事的威圧を強める台湾については「基本的な価値観を共有する極めて重要なパートナー、大切な友人」とした。中台関係が「平和的に解決されるべきであるとの立場の下、取り組みを継続」と掲げ、日本の関与姿勢を明確にした。

 国際情勢では中露の動向を踏まえ、「国際秩序に挑戦する動きが加速」していると警鐘を鳴らした。

 中国の動向は「これまでにない最大の戦略的な挑戦」と位置づけた。東・南シナ海での力による一方的な現状変更の試みや、台湾統一に向けて武力行使の可能性を否定していない点などを列挙した。

 反撃能力の保有や、重大なサイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」の導入も盛り込んだ。経済安保の項目を設け、サプライチェーン(供給網)の 強靱きょうじん 化などを挙げた。先端技術を安保で活用するため、「政府と企業、学術界の連携強化」も打ち出した。

 国家防衛戦略では、反撃能力を「攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の自衛の措置」と定義した。

 防衛力整備計画では23年度から5年間の防衛費総額約43兆円の内訳を説明。反撃能力の要となる相手の射程圏外から発射できる「スタンド・オフ防衛能力」構築に約5兆円、サイバー防衛体制の強化に約1兆円を計上する。継戦能力を向上させる「持続性・強靱性」確保に約15兆円を充て、このうち、装備品の維持整備・可動確保に約9兆円、弾薬・誘導弾不足の解消に約2兆円を振り向ける。

2022/12/10 01:32
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20221209-OYT1T50214/