岸田文雄首相は、安全保障政策を大転換しても「日本は平和国家だ」と胸を張れるのか。
 
岸田内閣が、今後十年程度の外交・安保政策の指針となる新たな「国家安全保障戦略」など安保関連三文書を閣議決定した。
 
安保戦略の改定は二〇一三年以来で、相手国領域を直接攻撃してミサイル発射などを阻む敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有と、五年間で防衛関連予算を倍増させる方針などを明記している。
 
同時に、平和国家として専守防衛に徹し、軍事大国にならないとの基本方針は「変わらない」と強調するが、列挙した防衛力強化策が実現すれば「平和国家」が名ばかりとなることを危惧する。
 
安保戦略改定の主眼は、敵基地攻撃能力の保有にある。
 
戦後の歴代内閣は、戦争放棄と戦力不保持の憲法九条に基づいて「攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめる」専守防衛を堅持してきた。

◆「専守」堅持という詭弁
 
敵基地を攻撃すること自体は、他に対抗手段がない場合は「自衛の範囲内」と認めつつ、他国に攻撃的脅威を与える兵器を平素から持つことは「憲法の趣旨ではない」として否定してきた。
 
岸田内閣は安保戦略改定に当たり、これまでの姿勢を一変させ、中国や北朝鮮のミサイル戦力増強を理由に「反撃能力を保有する必要がある」と踏み込んだ。
 
安保戦略は「専守防衛の考え方を変更するものではなく」「先制攻撃は許されない」とも説明しているが、詭弁(きべん)でしかない。
 
例えば、相手国がミサイル攻撃に「着手」したと日本が認定し、発射前に敵基地を攻撃すれば、国際法違反の先制攻撃とみなされ、日本攻撃の大義名分を与える。
 
日本が大量のミサイル攻撃を受ければ、反撃対象は相手国の政権中枢にまで拡大しかねない。それでも「必要最小限の自衛の措置」と言えるのだろうか。
 
敵基地攻撃能力の保有は、日米安保条約体制の下、防衛力という「盾」に徹してきた自衛隊が、「矛」である米軍の攻撃力の一部を肩代わりすることを意味する。
 
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東京新聞 2022年12月17日 08時08分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/220477?rct=editorial