「その保育園は悪くはない。でも、中国語を教えていないよね……」

 2021年7月、新型コロナウイルスの感染拡大によってロックダウン中だったタイの首都バンコク。記者(石山)が当時2歳だった娘の友達の母親たちと話していた時のことだ。テーマは、保育園や幼稚園が再開したら、子供をどこに入れるか。記者がすでに予定している保育園の名前をあげると、一瞬の沈黙の後、冒頭のコメントが返ってきた。取材はそこから始まった。

「中国と関わらない日はない」

 彼女らは2~8歳の子を持つタイ人の5人。タイ王室保養地であるホアヒンに別荘を持つような富裕層で、いずれも中国語教育がある幼稚園に狙いを絞っていた。「中国語はオポチュニティー(可能性)。これからの時代、英語に加えて中国語も話せなければ生き残れない」

 ある銀行の投資部門で働く母親(35)は自身の経験を交えながら力を込めた。彼女は祖父母が中国からの移民だが、タイでは1980年代まで反共政策などで中国語教育が規制されていたため、親世代は中国語が話せない。規制緩和後に育った彼女は、親から中国語を学ぶように言われたが、当時は興味が持てなかったという。「今、仕事の取引先で中国と関わらない日はない。中国語を学ばなかったことを後悔している」

授業料年300万円でも行列

 中国語教育に力を入れる親たちに最も人気が高いのは、01年に設立されたコンコーディアン・インターナショナルスクールだ。外国の大学の入学資格を得られる教育プログラム「国際バカロレア」の認定を受けており、…

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毎日新聞 2023/1/5 07:00(最終更新 1/5 15:33)
https://mainichi.jp/articles/20230104/k00/00m/030/228000c