徴用工の大半は応募工、個人請求権も1965年に完全かつ最終的に解決
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完全かつ最終的に解決された「個人請求権」

「支援財団が特別法制定を推進する背景には、日本企業を相手にした損害賠償請求訴訟で勝訴した被害者だけでなく、全被害者(21万8639人)を合わせた問題解決手続きが必要だと判断したからだ」と、記事には書かれている。

 先に述べた通り、徴用工被害者の大半は応募工であった。実際、戦後末期には強制徴用された朝鮮人もいたとされるが、彼らに対する補償は1965年の日韓請求権協定で解決した。

 今、問題となっている個人請求権については、韓国政府が日本側に示した「対日請求要綱」と併せて公表された交渉議事録にはっきりと書かれている。

「1961年5月の交渉で日本側代表が『個人に対して支払ってほしいということか』と尋ねると、韓国側は『国として請求して、国内での支払いは国内措置として必要な範囲でとる』と回答した」

 このことから、現在の日本政府が韓国側の要望に応じることは何もない。徴用工問題は、個人請求権を含めて1965年に「完全かつ最終的に解決」されたのだ。
【参考記事】
◎徴用工問題「支払いは韓国政府」で合意 外務省、日韓協定交渉の資料公表 【参考記事】
https://www.sankei.com/article/20190729-XZG3Z6WFJBJZ5HF3SYGMTL2VOE/

 続いて、中央日報は「支援財団のシム・ギュソン理事長は12日の討論会でも『被害者問題を包括的に解決できる唯一の方法は特別法制定しかない』と強調した」と伝えた。だが、彼らが進める特別法の制定は、徴用工問題をさらに複雑化させる危険性を孕んでいるように感じる。

 カネが受け取れるとわかった被害者たちが真実を語るだろうか。少しでも多くカネをもらいたいと考えるあまり、慰安婦問題の代表格である李容洙(イ・ヨンス)氏のように、証言を二転三転させる可能性がある。

 実際、日本に渡ってきた労働者の中には、「受け取る給料は日本人も韓国人も同じ金額だった」「差別はなかった」と証言する人がいる。まずは、そう証言する人々と強制徴用されたと主張する人々の意見を擦り合わせるべきではないか。

韓国政府が設立を目論む徴用工解決のための「基金」

 同財団は、司法手続きを通じて勝訴した被害者に向けた政府解決策と、訴訟は請求していないが、強制徴用被害事実を認められた被害者の両方に適用される特別法を同時に推進する「ツートラック戦略」を目指すそうだ。

 一方の韓国政府は、1965年の韓日請求権協定の恩恵を受けた韓国企業と公共機関、日本企業の自発的出資を基に基金を設立し、これを強制徴用被害者に支給することを解決策として構想中だ。

 今のところ日本の自動車メーカー、先端素材メーカー、化学メーカーなどが出資を検討している。筆者はイチ日本人として、これらメーカーの出資を日本政府には全力で防いでもらいたいと思う。

尹政権に問われる徴用工解決の本気度

「20時間リレー討論会」が開催されたからといって、この討論会が日本に有益に働くことはほぼないだろう。むしろ、日本に対する要求事項が増えるような気がしてならない。尹政権は日本をわずらわせずに、この大きな問題を解決できるだろうか。

 冒頭に述べた徴用工像を尹政権が強制撤去でもすれば彼の応援にまわるのだが、残念ながらそんな気配は一切ない。日本企業の自発的出資や輸出管理の解除などを求めるばかりで、尹政権の本気さが感じられない。これでは文政権とさほど変わらないのではないか。

 そうであるなら、やはり我々は1965年の韓日請求権協定を盾に、この問題を傍観するに限る。

JBpress 2023.1.30(月)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/73733