岸田文雄首相が1月23日、通常国会の施政方針演説で「フロッピーディスクを指定して(政府への)情報提出を求めていた規制を見直す」と語った。遺物のごとき「3.5インチ・フロッピーディスク(FD)」を、日本社会からなくしたいという意味だ。1枚当たりおよそ1.44メガバイトの情報を保存する3.5インチFDは、1990年代初めの時点で、パソコンに差してゲームもできるし資料も保存できるメディアだった。だが2000年代前後、超高速インターネット時代の登場とともに姿を消した。ところが日本の官僚社会や市中銀行では、依然としてFDを使っていたのだ。

 日本の現行法令には、FDのような物理的メディアを使用せよという強制条項がおよそ2100件ある。印鑑やファクスがなければ回らない日本のデジタル後進性をからかう材料が、また一つ増えた。FDより容量が18万倍も多いUSBメモリーを、韓国では4000ウォン(現在のレートで約420円。以下同じ)で売っているのに、日本では10年前に途絶えたソニーの3.5インチFDが3150円で売られている。日本の銀行が「犯罪捜査に協力する」として金融情報をFDに収めて警察署を訪れ、提出する光景は、クラウド時代においてはひたすら奇異に映る。

 だが岸田首相の演説の全文を見ると、「デジタル大国・大韓民国」という自画自賛で済ませてはいられなかった。岸田首相は演説で、GX・DX・オープンイノベーションといった専門用語に次々と言及した。GX(グリーン・トランスフォーメーション)には10年間で官民合わせて150兆円を投資して省エネ・脱炭素技術を研究・開発し、水素・アンモニア社会インフラを整備する大革命に挑戦するという。FDのような事態を防ぐため、岸田首相は「法令4万件を検討し、来年までに一挙に変える」とした。5年間でスタートアップ(ベンチャー企業)投資額を10倍に増やし、税制を改めて大企業とスタートアップ間のオープンイノベーションを支援する、とも語った。「今年4月には、レベル4、完全自動運転を可能にする新たな制度が動き始めます」として「全都道府県で自動運転の社会実験の実施を目指します」とも述べた。1万2156字の演説中、3861字が技術革新についての話だった。外交・安全保障・新型コロナ・物価といった大きな話題を全て合わせたのとほぼ同じ分量だった。

 韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の今年の新年演説において、技術革新への言及は2段落にとどまり、しかもそれすら自慢混じりで「スタートアップ・コリア時代を開きたい」という宣言でしかなかった。スタートアップ投資に韓国政府が支援を行う肝心の母体ファンドの予算は、今年は3100億ウォン(約326億円)にとどまり、2年前(1兆ウォン=約1050億円)の半分にも満たない。一時はにぎやかだった第4次産業革命委員会のホームページを訪れてみると、「サイトにアクセスできません」と出た。「尹政権は前政権よりも技術革新に関心が薄いらしい」という、東京で会ったある起業家の愚痴が思い浮かび、岸田首相が怖くなった。

東京=成好哲(ソン・ホチョル)特派員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 記事入力 : 2023/02/05 06:55
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