バイデン政権の対応の遅さに議会では超党派が批判

米軍が撃墜した中国の「偵察気球(スパイ気球)」は、米国内で波紋を広げている。米モンタナ州の核施設の上空などを飛行したが、何の目的だったのか、解析結果が待たれる。

領空侵犯は明らかな主権侵害である。なぜ、もっと早く撃墜しなかったのか。米国の恥である。「米国は自分の領土も守れないのか」と、同盟国にも動揺を与えかねない事態だ。

米国民は中国にも激怒している。ジョー・バイデン政権の対応の遅さに、議会では超党派で批判がわき起こっている。

上院軍事委員会のロジャー・ウィッカー上院議員(共和党)は「中国共産党のスパイ気球に米本土横断を許した。弱さの表れだ」と非難した。バイデン政権が気球飛来を「国民から隠そうとしていた」と主張し、徹底追及することを明言した。

民主党のジョン・テスター上院議員(民主党)は、中国の領空侵犯を強く批判したうえで、「なぜ、こんな事態になったのか」「どうしたら二度と起こらないようにできるのか」などと、バイデン政権に説明するよう圧力をかけているという。米政治専門サイト「ポリティコ」が3日、伝えた。

米中対立がさらに激化すると予想されるが、気になる記事を見つけた。

米誌ニューズウィーク(日本語版)は、今回の気球撃墜をめぐり、冷戦期の1960年に、ソ連が米偵察機「U2」を撃墜した事件を取り上げた。米国側は当初、「気象観測用の民間機が操縦不能に陥った」と主張するなど類似性もある。

当時は、米ソが「雪解け」のタイミングとみられていたが、撃墜事件で軍縮交渉も台無しになったという。同誌は、今回の件とは立場は異なるが、「私たちが『第2次冷戦』の初期にいることを再確認させる」と記している。

アントニー・ブリンケン米国務長官は「米中関係の再構築」のきっかけとみられていた訪中を延期した。米国がいくら関係改善を目指しても、「中国は信頼できる相手ではない」ことが分かった。米国内の世論を見る限り、ブリンケン氏の訪中は当面、実現しないのではないか。

むしろ、バイデン政権は中国に対して、報復措置を取らざるを得ないだろう。今後、どのような選択肢があるかが注目される。一部では、「台湾海峡に空母を送り込む」という意見も耳にしたが、米中ともに台湾問題の緊張感を高めることを望んでいないはずだ。

私は、中国政府が世界各国の大学などに設置している中国語教育機関で、諜報活動の拠点とされる「孔子学院」や、米国にも存在する中国の「非公式警察署」などを完全封鎖すべきだと思う。教育分野から、中国の研究者を追放することも可能性だろう。動向を注視している。

■ケント・ギルバート
2023.2/10 06:30
https://www.zakzak.co.jp/article/20230210-JOE3UZ72KNPPHGVZPKCKYHZ54E/