【異変!韓国エンタメ最新事情】

コロナ禍で映画館に人が行かなくなったのは日本も韓国も同じこと。韓国でも20億円以上もの制作費をかけた超大作「スペース・スウィーパーズ」が公開延期となった末、ネット配信での公開を余儀なくされた。

2021年に一番多く観客の入った「モガディシュ 脱出までの14日間」でさえ動員は360万人にとどまった。それほど映画業界に活気のなかった時期、日本映画の「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」が215万人も動員できたのは奇跡とさえ思える。

しかも1月4日から公開された日本映画『THE FIEST SLAM DUNK』(以下「スラムダンク」)もすでに200万人を突破。道枝駿佑(なにわ男子)主演で昨年11月に韓国で公開された日本映画『今夜、世界からこの恋が消えても』も先月には100万人を記録した。

「スラムダンク」は原作を忘れている中年世代から「スポーツ観戦に近い感覚で観られる」と好評で、字幕版と吹替版の両方を観に行く観客も少なくない。

ハマっている韓国人女性は「中年の忘れていた〝青春〟が戻ってきた感じ。その世代の夫婦が子供を連れ劇場に行き、子供もまた初めて観る『スラムダンク』にハマって楽しんでいる」と話す。

この人気に便乗してデパートでもやたら高いユニホームやグッズが販売されている。映画でハマった若い世代は「大人の財力には勝てない!」と嘆いているそうだ。

いまだ冷めやらないW杯の興奮と熱気も少なからず影響しているのだろう。熾烈な学歴社会の韓国ではスポーツは私費で習うもので、中高生でも学校に部活動があるわけでもない。こうしたスポーツ教育の環境を嘆いてか、W杯で韓国代表の選手から飛び出したのが「日本のサッカー界がうらやましい」の一言だった。メディアでも取り上げられ、〝日本憎し〟で終わらず「環境が整った日本に学べ」という謙虚な姿勢も見られた。

ちなみに、そんな韓国で「スラムダンク」に劣らぬ人気だったのが、韓国映画「英雄」だ。伊藤博文を暗殺した安重根の生涯を描いている。

日本の「スラムダンク」で青春時代を懐かしむ人がいる一方、抗日運動家の「英雄」に涙する人もいる。良くも悪くも今の韓国映画界は〝日本〟の存在が大きい。 =おわり

■児玉愛子(こだま・あいこ) 韓国コラムニスト。韓流エンタメ誌、ガイドブックなどの企画、取材、執筆を行う韓国ウオッチャー。メディアで韓国映画を紹介するほか、日韓関係のコラムを寄稿。

2/13(月) 17:00配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/42e8fb0863ad5ec0cd7afcf1d59e71c998781aa3