世界各国の公文書を分析して分かった、多くの国がとっている曖昧戦略 (譚 ?美:作家)

 中国政府は長年にわたり台湾は中国の一部だとする「一つの中国」原則を展開し、世界の180カ国がそれを承認していると主張している。

 ところが最近、国立シンガポール大学の政治学系の庄嘉頴副教授が世界各国の公文書を分類・整理したところ、「一つの中国」原則を全面的に受け入れている国はわずか51カ国だけであることが判明。
残りの国々は国情に応じて異なる認識を示していることがわかった。

「承認する」としている国が51カ国

 中国政府が主張する「一つの中国」原則とは、三段階論からなる。
(1)世界にはただ一つの中国しかない、(2)台湾は中国の不可分の一部、(3)中華人民共和国は中国を代表する唯一の合法政府である、という主張だ。

 だが、いくら中国が強硬に主張しても、世界中の多くの国々は自国の国情に合わせて曖昧に受け入れ、独自解釈しているのである。

 博訊ネット(2023年2月19日付)によれば、庄嘉頴副教授はまず、世界各国の公文書にある「一つの中国」原則に対する表記を比較検討し、
それを10パターンに分類した。最も多かったパターンは、「一つの中国」原則を認め、中華人民共和国は唯一の合法的な政府であり、
台湾は中国の一部である(不可分の一つの省である)として「recognize」(承認する)という用語を使用している国が51カ国あったが、決して中国がいうように180カ国ではなかった。

 さらに残りの約130カ国を9パターンとして、そのうち7パターンでは、中国政府の合法性を承認しつつも、必ずしも台湾に対する主張を受け入れているわけではないことが判明した。

ロシアでさえ「台湾は中国の一部」という主張について「尊重し支持する」止まり

 7パターンの表記には、「中華人民共和国が台湾を中国の一部であると主張している」ことを「acknowledge」(認知する)と表現した国が9カ国あり、
また、同主張を「take note of」(注記する、留意する)と表現している国が9カ国。「understands and respects」(理解し尊重する)と表現している国が9カ国。
中国の主張を「respects」(尊重する)とだけ記した国が2カ国あった。

 注目すべきは、ウクライナ侵攻で西側諸国の批判を浴びているロシアは、中国と強い絆で結ばれているはずだが、
どう表記しているかと言えば、「respects and supports」(尊重し支持する)という表現に留まり、明快に「台湾は中国の一部」であるとは承認していないのである。

 ちなみに、日本は1972年の日中共同声明で、「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する」と規定し、
台湾については「(中華人民共和国は)台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。
日本政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し尊重し、ホツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する」としている。

 つまり日本は、「台湾は中国の一部」だとする中国側の主張を「全面的に認めたわけではない」としつつも、
「ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持」と但し書きをつけたのである。

「ポツダム宣言」の第8項とは、1943年11月の「カイロ宣言」で規定された内容を指し、第二次大戦で「日本が奪った台湾と澎湖諸島を返還する」とされたことを改めて明記したのである。
もっとも、当時の中国を代表する政権は中華民国政府であり、中華人民共和国ではなかった。

 米国の場合は、1972年の「上海コミュニケ」で、「台湾海峡の両岸のすべての中国人は、中国は一つであり、
台湾は中国の一部であると主張している」ことを「acknowledge」(認知する)と記し、日中共同声明と同様、台湾の扱いについては含みを持たせ、将来的に柔軟な対応ができるような表現にしている。

以下続きはソースから

2023.2.26(日)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/74092?page=3