JBpress 2023.3.23(木) 北村 淳
ー前略ー

中国にとって好ましい方向性を打ち出したオーストラリア

 さらに中国にとっての朗報は、アメリカとイギリスが中国脅威論によってオーストラリア政府の恐怖心と警戒心を盛んに煽りたてて、アメリカの軍事力に一層頼るように仕向けたことと、
見積り金額が高騰し予定納期も伸びてしまっていたフランスとの潜水艦開発契約をオーストラリア政府に一方的に破棄させることに成功したことである。

 ただし、フランスとの契約破棄に乗じて、米海軍戦略家たちが期待したように、日本の潜水艦を取得することになってしまえば、中国にとっては思わしくない状況となったはずだ。

 その場合には、オーストラリア海軍は2030年から日本が開発した新鋭潜水艦を手にすることになる。
そして、アメリカ海軍が攻撃原潜を、日本とオーストラリアが高性能ディーゼル・エレクトリック潜水艦を運用することによって、潜水艦戦における効率的役割分担が強化できるという、
米海軍潜水艦戦略家の期待が実現することになるのである。裏を返すと、中国にとってアメリカ陣営の潜水艦戦力は厄介度を増してしまうことになるのだ。

 ところが、中国にとって再び好ましい方向性をオーストラリアは打ち出した。すなわち、当初の潜水艦戦力増強の理由付けを捨て去って、
次期潜水艦をディーゼル・エレクトリック潜水艦からイギリス製あるいはアメリカ製の攻撃原子力潜水艦を取得することになったのだ。
この方針は「AUKUS」という中国を念頭に置いた米英豪英語圏3国軍事同盟結成とともに打ち出された(2021年9月)。

 当然ながら、中国は表向きは「アジア地域の平和を乱す時代遅れの冷戦的思考」と批判してはいたものの、内心はほくそ笑んでいたものと思われる。
なぜならば、オーストラリアは、中国海軍にとっては厄介なオーストラリア北方の多数の島々が横たわっている海域で、攻撃原潜よりも強敵となる高性能ディーゼル・エレクトリック潜水艦を捨て去ってしまったからである。

アメリカが自国製潜水艦を売りつけるための茶番劇?

 そして、AUKUS結成の際に公約したように、1年半後の2023年3月13日に、オーストラリア海軍潜水艦調達計画が上記のごとく公表された。

 中国は今回のAUKUS共同声明に対しても、強い懸念を表明しているが、実際にはアメリカが自国のヴァージニア級潜水艦を無理やり売りつけるための茶番劇と考え、笑いが止まらないといったところであろう。

 なんといっても、開発・建造・配備に長時間がかかる攻撃原潜をオーストラリアが手にするのは早くとも2040年代となる。
現時点で攻撃原潜(旧式を除く)を6隻以上、ディーゼル・エレクトリック潜水艦(旧式を除く)を44隻以上保有する中国海軍は、
2040年代には新旧交代を考慮しても攻撃原潜は14隻以上、ディーゼル・エレクトリック潜水艦は50隻以上有し、オーストラリア海軍など歯牙にもかけない状況をさらに強化していることは確実である。

 やはり中国海軍にとって気になるのは、アメリカやイギリスに振り回されているオーストラリア海軍のいつになったら誕生するかわからない攻撃原潜ではなく、
着実に自国での生産を推し進めている日本と韓国(攻撃原潜の開発にも着手している)の潜水艦戦力の動向であろう。

かなり省略してるので、全文はソースから
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/74462