【ソウル=上野実輝彦】日本統治時代の韓国中西部・大田テジョン市で実業家の故辻万太郎さんが建てた別荘が、同市文化財に登録されたことが分かった。聯合ニュースが報じた。万太郎さんの息子で愛知県江南市に住む醇あつしさん(84)は「建物が保存されることはうれしい。日韓交流の場になってほしい」と喜んでいる。

◆辻さんの地域貢献も影響か

韓国では「敵産家屋」として解体されることの多い日本人の別荘が登録された背景には、万太郎さんの地域貢献が認められたこともあるとみられる。聯合ニュースによると、登録は7日付。「大きな窓から光を取り入れ、西洋式のいすに座りながら屋外の風景を眺められる別荘は、内陸部ではほとんど例がない。装飾用の窓やセメントブロックなどが時代性を備え、登録文化財の重要な基準となった」と報じた。
 
大田市の文化遺産館長は「今後、別荘をできるだけ元通りに復元し、市民の憩いの場や建築展示体験館などとして開放していく計画だ」と語ったという。
 
万太郎さんは、滋賀県彦根市から大田に移住してきた実業家の息子として1909年に生まれた。醸造工場を朝鮮半島屈指の食品会社に育てたり、発電所などインフラ整備を行ったりして地域の発展に尽くした。

東京新聞 2023年3月27日 11時00分
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