ー前略ー
・北朝鮮寄りの情報

 韓国に来て、日韓問題に詳しいという諸先生方に会っても、同じ思いが込み上がってきた。
特に北朝鮮、在日、日韓問題に関していえば、彼らから聞く話は、すでに私が理解していることが大半で何も目新しいものがないのだ。

 私からすれば、韓国では「こんなことも知らないんだ」と驚かされることが多いと同時に、いったいなぜ「知らないのに」その情熱はどこから湧き出ているのかと思ってしまうわけだ。

 さらに驚くのは、日本に行ったことのない韓国人(老若男女問わず)たちの日本に対するイメージはめちゃくちゃで、私自身、そんな人たちの話を聞いても言い返すのが馬鹿らしいくらいなのだ。
まだ西洋人の「サムライ、フジヤマ、ゲイシャ」のほうがマシだと思えるような話をする人も少なくない。

 そんな韓国人に“北朝鮮寄り”の情報をすり込もうとするのは意外と難しくなく、実際にそれを実行している人たちが少なからずいるというのが見逃せない現実なのだ。

 本来であればDMZ(38度戦非武装地帯)のある韓国は、北朝鮮と休戦状態で、あくまで北朝鮮は“敵国扱い”だ。だが、韓国内を見たらどうだろう。

 国民は左派の言う「民族は一つ、祖国統一」を一緒に唱えている。韓国で私が「朝鮮半島は統一すべきか」と聞くと、ほぼ100%近い答えとして「統一すべき」と返ってくる。
理由を聞くと多くの人が「一つの民族だから」と言うが、これこそが北朝鮮が作った“まやかし”の一つだと思う。

 私も朝鮮学校時代に「一つの民族」と教え込まれ、「決して同胞は同胞を騙さない」と思い込まされていた。
だから、朝鮮学校では集団的意識教育の重要性、仲間意識を徹底して教え込まれたが、家に帰ると親父の言うことはその正反対で、「同胞こそビジネス相手にするな」であった。

 実際、私の実家の生業は土建会社だったが、そこに妨害が入れてくるのも同じ同胞なのだ。
それを知っていた私からすれば、子どもながらに学校での教育内容と実社会のギャップに悩んだことがあったほどだ。

・反日、反米、反韓…

 もちろん韓国に渡っても、この頃を思い出す出来事ばかりで、いったい学校教育とはなんなのだろうと思ったものである。最近、私は朝鮮学校が「民族教育」をしていると謳うことに「?」をつけている。
事実、卒業生が朝鮮学校の教育内容を把握した上で(私の場合は12年)どこに「民族教育」があったのか何ひとつ思い出せないからだ。

 いまはそれほどでもないらしいが、当時はすべての教科で「反日、反米、反韓」が盛り込まれていたし、
日本社会で暮らす上で学校にも自宅にも金日成、金正日の肖像画がある中で、どこに“朝鮮民族的なこと”を感じられるというのだろうか。

 いまはないと聞くが、私たちの頃には、学校にあった「革命歴史の部屋」は金日成がどう革命を起こしたかについての記述ポスターなどが満載であった。
そこで少年団(北朝鮮の生徒会みたいなもの)は真紅のネクタイ(三角スカーフ)で北朝鮮の偉大さ、いわゆる金日成への忠誠を誓うわけだが、こんなものが民族教育なのだろうか。私はそうは思えないのである。

 我々在日がいまも受け継ぐ朝鮮民族の風習や慣わしはすべて家族やコミュニティーでの交流で得たものであり、学校で学んだものではない。
だから、私には文在寅政権が誕生した時、さらにいまの韓国野党を見ていると、当時と同じような気持ちになってしまうのだ。

 韓国が文在寅政権下で勢い付かせたのは、日本国民の無関心にも一端があっただろう。だが、いまの日本国民はしっかり個人の価値観で韓国と向き合い始めていることに私は嬉しく思っている。
同時に韓国でも異変が起きていて、これまでの“欺瞞”に気づき始めている人たちが出てきているのは大きい。

 なにより一番近い隣国なのだからなんとか手を取り合って更なる発展をして欲しいと願うばかりだ。

豊 璋(在韓国コンサルタント)
現代ビジネス 4/12(水) 7:32配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/698d5f961094acd21f436b414e1270249a8e89df