外国人労働者受け入れの在り方を見直している政府の有識者会議の中間報告書のたたき台は、労働力としての位置付けやミスマッチからの失踪など、技能実習生制度のさまざまな問題点を改善して人材確保を目指す。実習生を経験した外国人在留者は、体験を通じて「問題解決には語学力の支援が重要」と指摘する。

 「私につかまってください」「痛いところはないですか」。鹿児島県鹿屋市串良の特別養護老人ホーム以和貴苑。ベトナム人のグエン・ティ・トゥ・ガンさん(29)が、ベッドに横たわる高齢者の肩や腰を支えながら抱き上げた。

 ガンさんは2020年2月に技能実習生として来日。現在は特定技能で在留し、この春に介護福祉士国家試験を突破した。当初は日常会話程度の語学力だったが、今は新聞記事を読みこなせるほどになった。

 ガンさんは「介護分野は一定の語学力がないと受け入れてもらえない上、人と毎日接するので上達しやすい。他分野は日本語を話せなくても来日できるので、仕事中に会話がなければ、ほとんど話せないままの人も少なくない」と明かす。

 県外の建築会社で実習していたベトナム人の知人は失踪したという。「実習先で不利益があっても、言葉が通じなければ意思疎通が図れない。長続きしない背景には語学力不足がある」と強調。「語学面の支援が不十分であれば、新制度になったとしても失踪など根本的な問題は解決しないのではないか」と指摘した。

 その上で「給料面など待遇を見ると、韓国やオーストラリアの方が好条件になっている。円安もあり、現状では日本が選ばれにくくなるだろう」と予想した。

 ガンさんを受け入れた社会福祉法人以和貴会の西丸晴彦理事長(51)は、国際的な獲得競争の激化を受け「国や県は語学習得を支援したり、受け入れ事業所に助成金を出したりして待遇引き上げ策を考えてほしい」と求めた。

南日本新聞 4/15(土) 23:05
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