不人気政策踏み切れず「逆ザヤ」解消先送り

 2023年5月15日、韓国政府は家庭用電気の値上げを発表した。

 値上げ幅は5.3%。諸外国が原油や天然ガスの上昇に応じて大幅な料金引き上げを続ける中で、韓国は原価割れの「世界で最も安い料金」が続くことになった。

 電気料金の値上げが発表になった翌日の5月16日、ソウルは朝から気温がぐんぐん上昇した。昼頃には30度を超える暑さとなった。
ソウルは30度、エアコンフル稼働

 昼食後にソウルを代表する繁華街である明洞(ミョンドン)を歩いてみた。コーヒーショップや化粧品などを販売する店はドアを開けっぱなしにしてある。

 知人と一軒のコーヒーショップに入ったら、震えるほどの寒さ。真夏並みにエアコンが稼働していた。

 オフィスビルに入ってもエアコンが効いて寒いくらいだ。

 コーヒーショップ一緒に入った知人は「あそこの人、こんなに外が暑いのにセーターまで着ている。こんなにエアコンを強くする必要があるのか…」と嘆いて見せた。

・4人家族基準で月に300円上昇
ー中略ー

・韓電社長残酷史

 ある経済閣僚経験者はこう話す。

「韓国電力に料金を決める権限があるのなら経営責任を問うことも分かるか、
政府が値上げを見送ったり、値上げ幅を抑えたせいで韓国電力は巨額の赤字になった。社長更迭は気の毒な面もある」

 5月16日付「中央日報」には「韓電(韓国電力)社長残酷史」という論説委員のコラムが載った。

 韓国電力は資産規模235兆ウォン、従業員数2万3000人の韓国最大の公企業だ。

「それでも価格決定権はない」

 だから「いくら良い経営者を招聘しても実力を発揮するのは難しいことが多い」。

 これまでも、経営能力を高く評価されたLG電子、現代建設、ハイニックス(現在のSKハイニックス)のCEO(最高経営責任者)経験者を社長に起用したことがあるが、
多くの場合、実力を発揮できなかった。

 それどころか、政府と衝突して辞めた人物もいたという。

 今回もこの「残酷史」に名を刻んでしまった。

・安い韓国の電気料金は続く

 もちろんこの間、国際エネルギー価格が下がって電気料金を引き下げて「名経営者」となった例もあるが、むしろ少数派だ。

「社長まで辞めさせたのに、これ以上の値上げは難しかったのかな?」

 5月16日に会った経済閣僚経営者はこう話す。

「原価割れが続いている韓国の家庭用電気料金だが、国際比較しても圧倒的に安い。これでは電気の無駄遣いがなくならない」

 韓国メディアによると、2022年9月時点での1kWhあたりの家庭用電気料金は、韓国が154ウォン程度。これは日本の半分、ドイツの4分の1以下だという。

 これでは「節電」が定着しないとの懸念は少なくない。

 一方で、消費者、一般国民は昨年から続く物価高に敏感だ。国際比較を持ち出されても、大幅値上げをすんなり受け入れることにはなるまい。

 韓国の安い電気料金は、いつまで続くのか。この元閣僚は言う。

「今の与野党激突の政治状況では、値上げ幅が大きくなると責任問題、政治問題になる恐れもある。今後、総選挙が近づくにつれて値上げはさらに難しくなる」

 韓国電力の赤字解消の見通しもなかなか見えない。

全文はソースから

2023.5.17(水) 玉置 直司
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/75198