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今回の南京の一件に関しても、根底には昨年と同様の背景があるのでは、とこの中国人は分析する。

「イベントの開催予定日(7月17日)は1937年、蒋介石と周恩来が廬山(江西省九江市)で会談し、抗日決戦で合意した日であるということがSNSで広まり、それがナショナリズムに火をつけたようです。『わざわざこんな日に日本を想起させる夏祭りを開催するというのは何事か。国辱の歴史を忘れたのか』といったコメントがSNS上にあふれていましたので。主催者は慌ててイベントを中止し、火消しに走ったのだと思います」(同上)

 イベントの主催者は中国人であり、「夏日祭」という日本の「夏祭り」から連想した名称を付けたのも中国人自身だ。

 私は2020年8月、『中国での日本風「夏祭り」が驚くほど本格的で、大人気となっている理由』という記事を書いた。そのときは、2014年頃から始まった訪日旅行ブームにより、中国人が日本の伝統的な夏祭りの存在を知り、中国にも取り入れたというほほ笑ましいエピソードを紹介した。それからわずか2年の間に、このような形で日本の夏祭りが批判にさらされる対象になるとは想像もできなかった。

 この一件は日本には何ら関係のないことであり、日本人が聞いたらびっくりするような話だが、中国メディアの報道によれば、「夏日祭の開催予定地(全国の20都市、21カ所)を地図上でつなぎ合わせると、日本列島の形になる。これは偶然か?何かの陰謀ではないのか?」といった書き込みまで表れた。夏祭りイベントの最初の開催場所が南京であったことも、よけいに「反日的な雰囲気」に拍車をかけ、問題を大きくしたようだ。

 こうしたことからも分かる通り、中国ではここ数年、特に若者を中心にナショナリズムが異常なまでの高まりを見せている。顕著に表れたのは2021年夏に行われた東京五輪だった。卓球の試合で、日本ペアが中国ペアを破って勝ったときや、日本の体操の選手が中国人選手に勝って金メダルを獲得したときにも、中国のSNS上には日本をののしるコメントが大量に書き込まれた。