東京電力福島第一原子力発電所の「処理水」の海洋放出を巡り、国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシ事務局長が7月、韓国、太平洋島嶼(とうしょ)国のクック諸島、ニュージーランド(NZ)の3か国を訪問する方向で調整していることが分かった。各国政府に対し、処理水放出の安全性に対する評価を含む包括報告書の内容を説明する。

 複数の政府関係者が明らかにした。グロッシ氏は7月4日に来日し、包括報告書を岸田首相に手渡す予定で、3か国訪問はその後となる。IAEAはこれまで放出の方法や設備を妥当と評価する報告書を6本公表しており、近くまとめる包括報告書でも同様の見解を維持するとみられる。

中国政府は、「太平洋は日本が核汚染水を垂れ流す下水道ではない」などと科学的根拠の乏しい主張を繰り返している。日本政府はグロッシ氏の3か国訪問が、関係国の理解につながることを期待している。

 クック諸島は今年、太平洋の島嶼国などでつくる太平洋諸島フォーラム(PIF)の議長国を務める。南太平洋では過去に米国やフランスなどによる核実験が繰り返されたことから、伝統的に「反原子力」の考えが根強い。日本政府は今年に入り、14の島嶼国全てに首相の親書を届けるため、林外相らを特使として派遣するなど、安全性を訴えてきた。

 韓国やNZでも処理水放出への拒否感が強い。韓国では、野党が国民の不安をあおる根拠のない主張を続け、「国民を守ろうとしていない」などと尹錫悦(ユンソンニョル)政権を揺さぶる材料に利用している。グロッシ氏の3か国訪問は、こうした側面も考慮してのものとみられる。

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