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 原子力発電所から爆発とともに煙が上がっているが、国政の最高責任者である首相はこれをテレビニュースで知ることになる。
状況は緊迫していたが、1時間たっても現場からは何の報告も上がってこない。
最悪の場合、放射能の被害は半径250キロに達し、首都の市民ら5千万人を避難させなければならない。
国が滅びかねない事態を前にして首相の口は乾いていくが、判断に必要な情報は非常に不足している。

 映画のシーンではなく、12年前の福島第一原発事故で実際に起きたことだ。
福島第一原発が海水につかったのは津波という自然災害のせいだった。
だが1〜3号機の核燃料棒が溶け落ち(炉心溶融)、充満したガスが爆発(水素爆発)する中であらわになった民間の運営会社、
東京電力の無能と無責任は、なぜこの事故を「人災」と呼ぶべきなのかを物語っている。

 当時、収拾の総司令官だった菅直人首相は「東電は(責任を免れるために)危険を過小評価しようとし続けた」と証言する。
地震発生の4時間後から炉心溶融という最も深刻な事態が進行していたにもかかわらず、
その時点でもそのようなことは起きていないと報告していた。4日後に上がってきた報告書でも同じだった。
このような内容は事故の1年後、ドイツの公共放送ZDFが放映したドキュメンタリー「フクシマのうそ」によくまとめられており、
今もユーチューブで見ることができる。
ー中略ー

 時間の経過とともに変化はあったのだろうか。菅直人元首相は2021年の韓国放送(KBS)とのインタビューで
「この10年間、東京電力の体質が大きく変わっていないことが最近の地震で改めて分かった」と語っている。
同年2月にマグニチュード7.3の強震が発生した際にも、東京電力は稼動中の原発の被害状況をきちんと明らかにしなかったため、
隠蔽疑惑が持たれている。汚染水処理についても疑惑を持たれることが多数あった。
多核種除去設備(ALPS)でも炭素14がろ過できないことを知りながら、2020年まで隠していた。
1回目の処理後も汚染水から白血病や骨髄のがんを引き起こすストロンチウム90が最大で基準値の2万倍検出されたことも、
地域メディアが暴露した後になってようやく認めている。ALPSは何度か故障しているが、それもきちんと発表していなかった。
2021年9月には25個のフィルターのうち24個が破損していたことが明らかになったが、
その2年前にも25個のフィルター個全てが故障していたことが後に明らかになっている。

 汚染水は太平洋の水と混ぜれば安全だ、というのが科学だという。
しかし、天日塩を買いだめする国民の不安には経験的な根拠がある。
誰の手に握られていて、誰に利益をもたらす科学なのか、という問いが不安の下敷きになっているのだ。
今や私たちは、日本でも信頼されない東京電力の「科学」に30年間も付き合わされることになった。

イ・ボンヒョン|経済社会研究院長兼論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
登録:2023-07-17 00:53
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/47316.html