ー前略ー
■台湾国防史上、重要な意味
ー中略ー

 蔡総統は式典の中で、「自前建造は『不可能な任務』と考えられてきたが、われわれは成し遂げた」
「(国産潜水艦は)海に深く潜り、静かに祖国を守り、自由と民主主義を守る力になるだろう」と挨拶した。

 艦名は伝説の超巨大魚にちなんで「海鯤(ハイクン)」と命名された。艦番号は711。
台湾の潜水艦は「海龍」「海虎」といったように、「海」の後に生き物の名前を付けて名付けられている。

 欧州の海軍専門メディア、ネイバルニュースの9月28日付の記事によると、「鯤」は台湾島を上品に表現している。
また、「大きい」「ステルス性」「予測不可能」という意味もあり、新たな攻撃型潜水艦としてぴったりの名前だと同メディアは伝えている。
ー中略ー

■通常動力型としては大型
 進水式の映像や画像では、艦尾舵がX字型となっていることが確認できる。
これは海自の主力潜水艦「そうりゅう」型とその後継となるたいげい型と同じで、従来の十字型の艦尾舵よりも水中運動性に優れ、
着底しても舵の損傷が少ないことがメリットとなる。水深の浅い台湾海峡をはじめ、
浅瀬での優れた操縦性を潜水艦に持たせるためと考えられる。

 台湾の国章となる太陽の12条の光の紋章を標した幕が潜水艦の艦首を覆っているが、
これはおそらく魚雷発射管の詳細が明らかにならないようにするためだと思われる。

 ただし軍事情報専門の「ネイバルニュース」は、6つの魚雷発射管が装備されると伝えている。
またロイター通信によると、ロッキード・マーチン製の戦闘システムを利用し、アメリカ軍が使っているMK48魚雷を装備。
3番艦以降にはミサイルを搭載する計画だという。

 ジェーンズの分析によると、進水式の映像では、台湾がソ連/ロシア海軍のキロ級など他のディーゼル電気潜水艦(SSK)に見られる
均一な円筒形の形状要素の代わりに、やや箱状の前部と上部を採用したことを示している。

 これは、この潜水艦がダブルデックの2層の魚雷室を備えて設計されている可能性があることを示している。
これにより、より速い発射速度で敵艦に魚雷を発射できるようになる。

 X舵の配置と合わせて、この潜水艦の形状は、台湾海軍が戦闘群の護衛など烈度の高い作戦よりも、
ゆっくりと静かな抑止的な哨戒を優先していることを示唆している。いざとなれば中国海軍相手の待ち伏せ攻撃もできる。

 このような潜水艦の活動は中国海軍の作戦計算に大きな不確実性をもたらし、
同軍が台湾領海内で過度に攻撃的になるのを阻止することになるだろう。
つまり、中国海軍にとっては台湾の新たな潜水艦の登場で予測不可能性が極めて高くなり、
挑発的な行動に出る前に行動を再考せざるをえなくなるだろう。
ー中略ー

 台湾は、中国の侵略に対する抑止力となる潜水艦隊を構築するため、世界中から専門知識と技術を密かに集めてきたとされる。
ロイター通信は2021年11月29日付の記事で、中国政府の反発を受ける危険にさらされながらも、
少なくとも7カ国の防衛企業や技術者が台湾初の潜水艦建造を支援していると報じた。

 アメリカが戦闘システム部品やソナーなどの主要技術を提供。イギリス企業も潜水艦の部品、技術、ソフトウェアを台湾に供給したとされる。
台湾はさらにオーストラリア、韓国、インド、スペイン、カナダの少なくとも5カ国からエンジニア、技術者、
元海軍士官を雇用することに成功したという。

 一方、低振動で静粛性に優れ、世界有数の高性能を誇る通常動力型潜水艦を有する日本は、
台湾支援に消極的だったという。
台湾支援は日本でも非公式に議論されたが、中国からの反応を懸念して中止されたとロイター通信は報じた。
ー後略ー
高橋 浩祐 :国際ジャーナリスト

全文はソースから
10/3(火) 7:02配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/2af0d13d15b6c2bdc2800062cfbe523d1e9fb14d